フランス代表のヴァカタワ、突然の引退。心臓病により、W杯1年前に無念の涙。
フランス代表のスター選手で、来年のワールドカップでも活躍が期待されていたヴィリミ・ヴァカタワが、医学的理由により引退を余儀なくされた。
所属クラブのラシン92は今週はじめ、フランスラグビーのプロリーグを運営するLNRの医療委員会から、ヴァカタワが国内でプロ選手としてのキャリアを継続することを禁止されたと発表していたが、6日に会見を開き、心臓の問題を抱えていることを明らかにした。
パワフルでハンドスキルも高いセンターとして知られるヴァカタワは、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップの直前に、心臓の異常が発見され、そのときはプレーしても大丈夫と判断され同大会に出場したが、のちにクラブの医療チームが観察を続けたところ、徐々に悪化していったという。
ヴァカタワは会見で、「何の症状も感じませんでした。私は何も壊れていません。すべてが大丈夫です」と語ったが、医師は「プレーを続けるにはリスクが大きすぎる。進行中の病状で、あらゆる種類の激しいスポーツの練習で危険にさらす可能性がある」とし、プレーをやめなければならないと説明した。
フランスのメディアによれば、会見に同席したフランス代表のファビアン・ガルチエ ヘッドコーチは涙をこらえることができなかったという。
「今日ここに来て、フランスラグビーの名のもとに、ヴィリミが成し遂げたことすべてに敬意を表したいと思いました。彼は、私たちの冒険、歴史において偉大なプレーヤーだった。子どもたちに夢を与えてくれた」
現在30歳のヴァカタワは、ニュージーランドで生まれ、祖先の国であるフィジーで育ち、17歳のときにフランスへ渡った。そして、2010年からパリを拠点とするラシン92に在籍している。やがて7人制(セブンズ)のフランス代表に選ばれ、一時、セブンズに専念した時期もあったが、2017年に同クラブに復帰後はヨーロピアン・チャンピオンズカップ準優勝などに貢献した。
彼にとってビッグイヤーとなったのは2016年で、シックスネーションズのフランス代表(15人制)スコッドに選ばれ、2月のイタリア代表戦で初キャップを獲得、デビュー戦トライも記録した。そして、その半年後にはリオオリンピックにも出場し、7人制と15人制の両方で注目の存在だった。
15人制のフランス代表としては、2019年のワールドカップ出場も含め32キャップを獲得。今夏の日本ツアーにも参加して2試合連続で13番をつけていた。
フランスリーグのトップ14は先週末に新シーズンが開幕したが、ラシンの試合メンバーにヴァカタワは入っていなかったため、彼にとっては、7月9日に東京の国立競技場でプレーした日本代表戦がラストゲームとなった。
ガルチエ ヘッドコーチは、「最後の2試合、ヴィリミは私たちと一緒に日本にいました。彼は信じられないほど素晴らしかったです」と振り返る。
会見に出席したヴァカタワもまた、涙ながらに心境を語った。
「ラグビーは私の情熱です。いちばんつらかったのは、昨日、チームメイトにプレーするのをやめなければならないと伝えたときです。私はフィールドの内外で彼らと多くの時間を過ごしてきました。…話をするのは簡単ではありませんでした」
ヴァカタワは今後もフランスにとどまり、ラシン92に関わりたいという。
「私は17歳でここに来ましたが、家族と離れたことをまったく後悔していません。大変なこともあったけど、ここに来られて幸運だったと思っています。たくさんの人がそばにいてくれて、本当に感謝しています」
ラシン92は、ヴァカタワを全面的にサポートすることを約束した。
フランス代表のガルチエ ヘッドコーチもエールを送る。
「彼は引き続き、すべての人にとってのロールモデルであり続けることができます」