「ラグビーに国境はない」。富士吉田市にフランスの風、吹いた。
7月の最後の土曜日、とても晴れた朝だった。富士吉田市立吉田中学校ラグビー部の15人の部員は、いつものグラウンドではなく富士山の麓の諏訪の森自然公園の芝生広場に集合していた。
そこに、男子15人制元フランス代表のマキシム・メダールと、女子7人制元フランス代表のファニー・オルタが現れた。
メダールは2019年ワールドカップで、オルタは昨年の東京オリンピックの際に当地で事前合宿を行なっており、今回は市民との交流を目的として富士吉田市から招聘され来日していた。大会後のレガシー継承である。
オルタと一緒に来日していたパートナーのジェレミー・エカルディーも2人と共に練習に参加した。エカルディーは元男子7人制フランス代表でリオオリンピックに参加しており、現在はモナコ・ラグビー・クラブでコーチをしている。
ラグビー部員たちがタックルバッグを用いてコンタクトの練習をしている様子を見て、「コンタクトの前にステップを踏んでディフェンスを惑わすドリルを入れよう」、「巧みに動いて相手をかわし、ボールを繋ぐのが日本ラグビーの強みだよね」、「コンタクトの後に味方にボールをパスする練習も取り入れよう」、「誰もスパイクを履いていないなら、芝生の状態も良いし裸足で練習しよう。指で地面を掴む感覚や足の裏の筋肉が鍛えられる」と3人がどんどん練習内容を膨らませていく。
スキルの練習の後は2チームに分かれてタッチフットをおこなった。
終始スピーディーな展開で、フランスのテレビ実況が「マキシム・メダールの左足!」と必ず叫ぶメダールお得意のキックも見られた。日差しが厳しく暑い日だったが、ワールドクラスのプレーを生で体験しラグビー部員の表情には笑みが溢れていた。
3年生の渡辺祐三主将は「2人ともひとつひとつのプレーのレベルが高く、刺激になった。またキックのコツも教えてもらった。展開の速さや相手を惹きつけてパスするなど、今後の練習に取り入れたい」と山梨日日新聞に話している。
「選手の声や表情からチームメイトをからかいながらもお互いに思いやり、励まし合っているのが感じられた。また説明を注意深く聞き、彼らにとっては初めての練習内容だっただろうが気後れすることなく意欲的だった。疲れてきても『いつまでやるの?』と言う選手は1人もおらず、日本の教育は途中で投げ出さずに努力する大切さを教えているのだと感じた。楽しくて時間があっという間に過ぎ、午前だけではなく、お昼にバーベキューでソーセージでも食べて午後も練習、なんなら数日にわたる合宿でもいいのでは」とオルタも久しぶりのラグビーを吉田中学校ラグビー部員たちと大いに楽しんだ。
メダールも「ラグビーに国境はないということを実感できた」と、楕円球を通じた日本の中学生たちとの交流を心から喜んだ。