変わりつつある同大に力示す。関東大学リーグ戦4連覇中の東海大が58得点。
一気にたたみかけた。関東大学リーグ戦1部を4連覇中の東海大は、8月21日、長野・菅平高原にあるサニアパークで練習試合をおこない、関西大学Aリーグで昨季4位の同大を58-19で破った。
東海大にとって、ラグビーの合宿地のメッカでおこなった今年初めてのトレーニングマッチ。試合時間が4分の3に達する前に、ほぼ勝負がついた。
序盤は、同大が光った。
前半1分頃、自陣中盤右でルーズボールを確保すると左端へ展開。同10メートル線エリアでの接点で東海大の反則を誘えば、3年生CTBの嘉納一千の速攻とキックで敵陣22メートルエリアに進む。
嘉納は自ら拾った球をパス。防御の手に触れて転々とするボールへ、2年生WTBの山本希が飛び込む。5-0と先制した。
同大の宮本啓希新監督が以前プレーしていたのは、東京サントリーサンゴリアスの前身チーム。「アグレッシブ・アタッキング」を標榜し、運動量と反応速度を重んじる組織だ。
指揮官の母校である同大も、かねて攻撃の文化を有している。新体制が唱えるスタイルは、着々と浸透しつつあるようだ。
東海大が7点リードで迎えた20分以降も、同大が流れを作る。
まず敵陣中盤右で、4年生FLの小島雅登が好タックルを放つ。ともに刺さっていた1年生SOの大島泰真が、向こう側に倒れた相手走者の真上を通過する。ターンオーバー。ここから同大はフェーズを重ね、東海大のタックラーの反則を引き出した。
22分、敵陣22メートル線付近左でのラインアウトから展開。簡潔な突進と素早い援護を重ねた後、深めに立っていた大島が魅する。
球をもらいながら2人の防御の間に駆け込み、右大外のスペースへパス。FBの大森広太郎のステップとフィニッシュが決まり、まもなく12-12とタイスコアになった。
対する東海大は時折、自分たちで防げる類のミスで苦しんでいた。
敵陣の深い位置で組んだスクラムでフリーキックを与えたり、キックを飛ばしすぎてしまったり。ある程度、点差をつけていた試合終盤も、同大の交代選手の奮闘に後手を踏む節があった。
それでもハーフタイム前後、相手を圧倒する時間帯を作った。そうできるだけの集中力と底力は、結果を出してきたここ数年の間に練り上げていた。
同点で迎えた前半33分頃から、敵陣22メートル線付近左での相手ボールスクラムをプッシュ。同大にあまり陣地を挽回させず、スクラムがあったのと近い位置でのラインアウトからボールを継続する。
4年生PRの井上優士らが壁をこじ開け、3年生FBの谷口宜顕が守備ラインの凸凹を突きながらオフロードパスを繰り出す。2年生WTBの中川湧眞のフィニッシュなどで、19-12と勝ち越した。
続く37分頃には、2年生CTBの近藤翔耶が力を示す。自陣10メートル線付近左でのカウンターラックとドリブルにより、自らのトライを演出する。
24-12とリードして後半を迎えると、東海大はさらに加速する。
1分、4年生LOのワイサケ・ララトゥブアのラインブレイクから、同級生のFLであるレキマ・ナサミラがこの日2度目のフィニッシュで29-12とする。
4分、同大のキックオフ後の攻防でナサミラが前進し、左大外で球を受けた4年生CTBの伊藤峻祐主将が複数名の群れから抜け出す。
伊藤主将からパスをもらったのは、4年生NO8の井島彰英。約30メートル、前進する。次いで3年生SOの武藤ゆらぎが、右大外の中川にキックパス。中川も2トライ目を記録した。34-12。
7分、同大の反則でもらった敵陣中盤右のラインアウトから3年生FLの佐々木浩祐が中央突破。SHの清水麻貴が止めを刺す。39-12。
一気に得点が動く間は、同大のタックルが決まりづらくなっていた。10分の中川のハットトリックも、同大ボールキックオフの直後に武藤が3人抜きを決めたのがきっかけだった。その折はトライ直後のコンバージョンも決まり、46-12。
東海大は13分にも、自陣からの連続攻撃でスコア。2年生LOの中山竜太朗の角度をつけたラインブレイク、近藤と谷口とナサミラの仕掛けながらのつなぎが、伊藤主将のフィニッシュにつながった。こちらもゴールキック成功で53-12。
試合後はその場で控え組のゲームが始まり、各部の主力組の大半は三々五々、引き上げていった。同大の宮本新監督は述べる。
「いける(勝てる)と思いましたが、後半最初の10分が無責任(な戦いぶり)でした。あれで、ゲームを壊しました。いい時の形が見えているのに、自らその形に行っていない感じが…」
東海大がギアを入れた時間帯の、自軍の動きがやや消極的に映ったようだ。