女子 2022.08.14

五輪出場の夢。ハンドボールからの転向は一大決心。水野小暖[岐阜第一/FB]

[ 明石尚之 ]
五輪出場の夢。ハンドボールからの転向は一大決心。水野小暖[岐阜第一/FB]
水野小暖はJ-STARプロジェクトの2期生で、九州のWTB佐藤晴菜(富島)も7人のうちのひとり。唯一の同級生で3年ぶりの再会を喜んだ(撮影:福地和男)

 人生は選択の連続だが、なかにはその後を左右する大きな決断もある。

 岐阜第一高校の3年生、水野小暖(こはる)は競技選択で大いに悩んだ。

「最後の最後まですごく悩みました。でも上を目指したいという思いが強かったです」

 7月29日から3日間に渡りおこなわれたコベルコカップ2022。水野は東海ブロックの一員として、初めての15人制に挑んだ。

 岐阜の大垣にある興文中ではハンドボール部だった。3年時はエース兼キャプテンとして、チームを創部初の全国大会に導く。
 ポジションは点取り屋のライトバック。春の全国大会では1試合の最多得点者にもなった。

 楕円球との出会いは、そんなハンドボール真っ盛りな中学2年の冬。学校の先生に「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト(J-STARプロジェクト)」への応募を勧められた。スポーツ庁や日本スポーツ振興センター、日本オリンピック委員会らが連携しておこなっているトップアスリート発掘事業だ。

 水野は書類審査をパスし、中部地方の測定会、各地域から集まった選手たちによる2回目の測定会も突破。ただその時、適性と判断されたのはハンドボールではなく、7人制のラグビーだった。

「ハンドボールやラグビーなどいろんな競技(いずれも五輪種目)があって、ハンドボールで受かりたいなと思って受けてました。そしたらラグビー(が適性)と言われて…」

 望んだ出会い方ではなかったけれど、その種目で選ばれるのはたったの7人だけ。しかも合格してからは約1年間、月1回のトレーニング合宿(3泊4日)に参加し、トップレベルの指導を受けられたのだ。

 その中部地方の測定会が偶然、岐阜でおこなわれていたこともあり、県協会の強化委員長も務めていた岐阜第一の木田敏行監督は同測定会を視察。水野の身体能力の高さを見て、同プロジェクトから適正と判断される前に、ラグビーに誘っていた。

 それから水野はハンドボールをメインに活動するも、時間があれば岐阜第一に顔を出して楕円球に触れる日々を送るようになった。

 だが高校進学にあたり、競技をひとつに絞ることを決める。
「ちょうどそのころ、ラグビーでいうユースアカデミーのハンドボールバージョンに落ちてしまった。それでハンドは難しいのかなと。セブンズのアカデミーには呼んでもらっていたので、ラグビーで代表を目指したいと思いました」

 ハンドボールには歩数制限があるけど、ラグビーはない。好きなように走り回れる。そんな魅力にも惹かれた。
「一番強度があるし、一番激しいスポーツ。最初は抵抗があったけど、いまは思い切りやれるからいいなと」

 岐阜第一に入学した時は女子部員がほかに2人いた。女子15人制TIDユースチームに選出されている青木菜々美(愛知教育大)は2学年上の先輩。同部初の女子部員だ。水野にとって目指す存在が近くにいたのは大きかった。

 いまは後輩3人(2年生1人、1年生2人)を合わせた4人で平日は練習。土日は木田監督が立ち上げに携わり、GMも務める女子ラグビーチーム「ぎふ清流レディース」で国体に向けて活動している。

 今年の4月には、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ(鈴鹿大会)にチャレンジチームの一員として、青木とともに出場することもできた。
「コロナで試合がなかったり、人数が少なくてなかなか実戦の機会を積めなかったけど、最近は大会が増えてきて楽しくなってきました」

 コベルコカップではFBを務め、1試合を除く4試合でフル出場。トライこそなかったけど、タッチ際でのランスピードやステップなど随所で光った。
「ハンドボールでずっとステップはやってきたのでそれが生きてます」

 課題も見つかった。
「タックルがまだ弱いです。もっと低く入ってたくさん倒して、チームに貢献したい」

 大学でもラグビーを続けることを決めた。中学で熱中した競技とは違うけれど、オリンピック出場の目標は変わらない。

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