国内 2022.07.25

全国高校7人制大会を制覇。報徳学園・石橋チューカ、感謝する「支え」。

[ 向 風見也 ]
全国高校7人制大会を制覇。報徳学園・石橋チューカ、感謝する「支え」。
報徳学園の石橋チューカ。今年度の高校ラグビー界で注目選手のひとり(撮影:黒崎雅久)


 応援されるべくして応援されてきた。報徳学園ラグビー部の泉光太郎コーチは、こう強調する。

「彼は、いろんな人に支えられている。それを本人も実感していると思います」

 話題の主は石橋チューカ。今年、高校日本代表候補でもある3年生部員だ。身長188センチ、体重95キロ。バネと加速力が際立つ。

 7月16日からの3日間は、全国高校7人制大会に出た。持ち前の身体能力を発揮した。大会MVPに輝く伊藤利江人、突破力のある海老澤琥珀とともに、初優勝を飾った。

 大会が開かれた長野の菅平高原には、リーチ マイケルが訪れていた。日本代表として2度のワールドカップで主将を務めたリーチは、出身の札幌山の手をサポートした。

 他校の選手にも視線を送った。特に、母校を0-41で下した報徳学園の大器に驚かされた。「あぁ、あの子ですか。本当にすごいですよ」。石橋のことだ。

 普段プレーする15人制では、リーチと同じFW第3列を主戦場とする。スケールの大きさが讃えられる本人は、「ありがとうございます」と頭を下げる。ひとりのチームマンとして述べる。

「報徳学園は、日本一という目標が定まっていて、おそらくどこのチームよりも雰囲気がいい。練習は常に、盛り上がっています」
 
 兄と姉との3人きょうだいだ。ナイジェリア人の父は母と別な道を歩んでいて、その消息を次男は知らない。祖母にも助けられながら、兵庫県姫路市で幼少期を過ごした。

 楕円球とは9歳で出会った。現在、京都成章へ通う前川大輔に誘われた。

「身体を当てられて、自分のしたいことができるのが楽しかったです」

 前川は中学2年時、もともと通っていた姫路ラグビースクールから兵庫県ラグビースクールへ移った。石橋がそれに倣うのは自然だった。普段、前川の保護者に送り迎えをしてもらっていたからだ。

 そう。「支え」を受けていた。全国4強入りの経験がある報徳学園にも、「支え」があって入学できた。泉コーチとは小学生のうちに出会っていて、中学3年時に正式にスカウトされた。

 いまは実家を離れ、学校の近くに下宿する。OBで元日本代表の、高木重保氏の実家である。高木氏の同級生でもある泉コーチは、背景の説明に配慮をにじませる。

「重保のお父さんは報徳学園の柔道部の先生でした。お亡くなりになったところ、重保が『母がひとりになる。誰か、(ラグビー部員を)住ませてくれへんか』って…」

 かくして青年は、周りの同世代よりも早く家族以外との共同生活を始めた。気遣いの心と感謝の念を育む。

「食事もおいしいです。お母さんは仕事が大変なので、家でご飯を作ってもらうのは厳しくて…。いまの環境は、めちゃくちゃ嬉しいです」

 学校では同級生でLOのジョーンズ日光と、筋力トレーニングに没頭する。運動習慣と栄養摂取を安定させ、ここ2年半で約20キロは重たくなった。

「75キロくらいだったのが95キロに。それと、70キロ台の時よりも足が速くなっていて、筋肉量も増えています」

 勤勉な態度。泉コーチにはこう褒められる。

「能力が高くて、まじめです。勉強もできるし――変な話ですが――ずるもしない」

 家を出る時点で、ラグビーで人生を切り開こうと覚悟している。高校卒業後は、関西の大学で競技を続ける。将来については「支えてくれる人がいる。日本代表になって恩返しがしたいです」と話し、こう締める。

「親に、家を建ててあげたいです」

 持ち前の誠実さと向上心で、人々の「支え」を引き出してきたようでもある。応援されるべくして応援される流れで、出すべき結果を出したい。

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