日本代表・李承信、フランス代表を向こうに堂々。仲間の評価は?
21歳で対フランス代表2連戦に続けて先発。2020年に帝京大を中退した李承信が、日本代表の司令塔候補に名乗りを挙げた。
7月9日、東京・国立競技場での2戦目は、公式で5万7011人の観客に見守られた。日本ラグビーフットボール協会主催の日本代表戦では最多。15-20と惜敗後、李はこう述べた。
「味わったことのないプレッシャー、歓声のなかでプレーできた。それは、これからのキャリアに活かしていけると思います」
身長176センチ、体重85キロと決して大柄ではないものの、長短のパススキル、冷静さ、貪欲さが代表首脳陣に評価される。
現所属のコベルコ神戸スティーラーズでは、ニュージーランド代表50キャップのアーロン・クルーデンらと定位置争いを演じた。与えられた出場機会で才能の片りんをのぞかせ、今夏、初の日本代表入りを叶えていた。
初先発は2日。愛知・豊田スタジアムでのフランス代表戦だった。この日はタックルミスもあり23-42と敗戦も、爪痕を残してもいた。防御をひきつけながらスペースへ運ぶパス、6本あったゴールキックは5本決める得点力で光った。
なにより9日には、さらなるマイナーチェンジに成功したか。チーム全体がキックとパスの配分を微修正したなか、若き10番が絶妙な足技でスペースをえぐることもあった。
「先週(2日)のパフォーマンスは自分では満足いかなかったのですが、(9日も先発に)選ばれた。期待に応えたい気持ちは大きかったです」
李の働きを、ともに戦ったチームメイトも賞賛する。
ワールドカップに3度出場した36歳の堀江翔太は「あんなに若いのに堂々とできるのはさすが」。同大会で2度続けて日本代表主将を担ったリーチ マイケルは、こう続ける。
「すごくタフだし、勢いがある、(相手にとって)怖い選手」
司令塔団を組んだSHの齋藤直人は、率直な感想で李のすごみを表現しきった。
「特に(問題点が)気にならなかったところが、よかった。やることも明確になっていて、試合中、迷うことはなかったです」
日本代表は9月上旬までに再集合し、秋以降のテストマッチをにらむ。さらに見据えるのは、来年のワールドカップ・フランス大会だ。
李がプレーするSOの位置では、「(有力候補が)5名いる」とジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ。今回のツアーに最初から参加できた山沢拓也に中尾隼太、さらには2019年のワールドカップで活躍した田村優、同大会スコッドメンバーで目下リハビリ中の松田力也も名乗りを挙げる。
今回のツアーを終えて、李は「(強豪国と自分たちとで)思ったほどの差はない。今回、自信になった部分もたくさんあった。もっと成長できるようにしたいです」。確かな技術と肝の太さを長所に、秋の戦いに挑む。