最後にトライも悔しがるシオサイア・フィフィタ。日本代表の「11」を守る決意。
ラストワンプレー。
「獲って終わりたかった」
ラグビー日本代表のシオサイア・フィフィタは、敵陣ゴール前で集中力を高める。
回ったのは持ち場と逆の右側である。防御の数が少ないと見たためだ。やや深めの位置から駆け込みパスをもらい、目論見通りにフィニッシュする。
直後のコンバージョンも決まる。ただし、チームは23-42で敗れた。
7月2日、愛知・豊田スタジアム。11番の左WTBで先発の23歳は、世界ランクで8つ上回るフランス代表に「思った通り強かった」と脱帽する。
試合終了間際にトライを決め、前半14分には強烈なランを得点につなげたが、要所で手こずっていたのだ。
13-13と同点で迎えた後半開始早々は、自軍のエラー、反則で停滞する。自身も自陣の深い位置で捕球ミスがあったとあり、「僕らのミス、ペナルティが多くて」と悔やんだ。最後は前向きだ。
「前半は勝てる自信があったんですけど…。後半最初の10分間は僕らの気合が入りすぎて、ペナルティを取られてしまった。(課題を)修正したいです」
9日には、東京・国立競技場で同カードに挑む。何度も言い切る。
「もう、次は勝てるという話は(選手間で)出ていました。次(今度)は最後の10~20分が試合決まると思う。来週は(課題を)修正して、必ず勝ちます」
2020年度にはスーパーラグビーのサンウルブズで経験を積み、在学していた天理大で初の大学日本一に輝く。現・花園近鉄ライナーズに入った21年度には、日本代表へ初選出される。
身長187センチ、体重105キロの体躯で豪快に駆け、オフロードパス、防御の裏側へのキックを繰り出す。おもに13番のアウトサイドCTBを働き場とするが、2021年に初選出の日本代表ではおもに11番を託される。
タッチライン際で味方のキックを追ったり、システムに伴い自身よりも外側に立つ味方と連携を取って相手防御を崩したりと、多彩な働きぶりが請われる。
球を持った際の「フットワーク」に加え、球を持たぬ時の動きも磨きたい。
「ディフェンスでも、アタックでも、フィジカルでプレッシャーをかける。ボールを持っていない時の動き(も必要だ)と思うので、ワークレート(仕事量)を高めたいです」
ムードメーカーでもある。今年6月3日から約1か月にわたる宮崎合宿では、ある仕掛けで楽しんだ。建物の柱の陰に隠れ、目の前を通過する選手に大声を浴びせた。
仲間の驚く様子をSNSにアップし、「(かようないたずらは)たまに、しますね。(今後の投稿も)楽しみにしていてください!」と表情を崩すこともあった。
タフな道のりも、前向きに乗り切る。フランス代表戦の直後は、シリアスに述べる。
「日本代表の11番を誰にも渡したくないので、試合でいいパフォーマンスができるように日々の練習を頑張っていきたいです。世界一のWTBになりたいと思っています」
視線の先には、翌年のワールドカップ・フランス大会がある。