リアル版『ノーサイド・ゲーム』始まる。星野明宏氏、東芝ブレイブルーパス東京でプロデューサーに就任
――人にアプローチするのですね。
「人、人、人ですよ。間違いない。エンターテインメントは絶対に人です。いい人がいれば、いくらでも共感されるものを、作れると思っています。ブレイブルーパスは法人化したのに大して代わり映えがしない、と見られている節があるけれど、私はここへきて、社長はじめ皆さんに覚悟を感じました。それが、4月以降のチームの上昇に表れた。あの躍進には土壌があるんです。根拠がある。そして、最後に敗れてしまったことにも根拠はある。これは、私たちのようなマネジメントの立場の人間からすれば、宝の山です。それから――選手にはラグビーをぜひ、ファーストキャリアにしてほしい」
――ファーストキャリア。今こそが最も輝く時だと。
「今の選手はみんな、セカンドキャリアはどうする? なんて心配している、怯えているように思えます。引退後のことを心配しすぎるのも良くない。ラグビーが持つチカラ、信じてとことん体現してほしい。そして、社内、社外から『早く引退してウチに来てくれ』ってオファーが届くくらいになってほしい。目の前のファーストキャリアにどんな価値があるのか、自分はどんな人間になりたいのかを意識して生活してほしい。外国人のコーチが持ち込んだプログラムを漫然と消化するだけの選手になってほしくない。選手の生き方は、チケットを買ってくれるファンの共感に直結するのです」
人の潜在能力を信じて、発揮させて、発信する。過去トップリーグ優勝5回の名門が、プロデューサーのもとでどんな光を放つか。プレシーズンもチームは多くの発信をしてくれるはず。変わり続ける東芝ブレイブルーパスに注目しよう。
PROFILE
ほしの・あきひろ。
1973年3月4日生まれ。東京都出身。桐蔭学園中高→立命大→(株)電通→筑波大大学院→静岡聖光学院中学校・高等学校。いわゆる寮監の教員としてスタートし、社会科教師に。教頭、副校長を経て2019年に学校長に就き、数々のプロジェクトで学校改革を成し遂げた。新型コロナ感染が広がると、全国一斉休校の初日からという異例の迅速さでオンライン授業を実装した。2021年には一般社団法人・静岡県ラグビー協会を立ち上げ、代表理事に。2022年7月より現職。著書に『凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。』 (すばる舎)。
ラグビーにおいては中学校でプレーを始め、高校まで全国経験はなし、立命大では9軍からのし上がって3年時にレギュラーを掴んだ。教師となって静岡聖光学院を初の全国大会出場に導き、U17日本代表監督(2015、2016年)、U18日本代表監督(2017年)なども務めた。