日本代表・茂野海人、フランス代表戦で訪れたチャンスで「役割を実行する」。
緊急事態なのは間違いないだろう。それでもラグビー日本代表の茂野海人は、淡々と述べる。
「自分たちがコントロールできる部分と、できない部分がある。コントロールできないことにフラストレーションをためてしまっても、自分たちにいいことはそうない。(日本代表には)いい選手が揃っている。誰が出ようが、そこが日本代表であることには変わりないです」
7月2日、世界ランクで8つ上回る2位のフランス代表とぶつかる。
当日までの準備段階では、チーム内で体調不良者が続出。6月29日までに最年長でHOの堀江翔太、直近のゲームでスターターだったSHの齋藤直人とFBの野口竜司が離脱した。新型コロナウイルスの陽性反応が出たためだ。
さらに前日練習の直前、司令塔のSOで先発予定だった山沢拓也も同じ理由でグループを抜けた。リザーブの李承信がその穴を埋め、30日に追加招集されたばかりのシェーン・ゲイツがベンチに繰り上がる見込みだ。
SHで先発予定の茂野海人にとっては、キックオフ時に司令塔団を組む相手が直前に代わりそうな状況である。
しかし、動じない構えだ。
「そういうことも、あるかなと。自分たちに集中しながらやっていきたいです」
話をしたのは前日練習後。試合会場の愛知・豊田スタジアムでのことだ。連日の猛暑については頼もしげな談話も残す。
「この暑さをエンジョイしながら、ジャパンのラグビーを貫き通す。モメンタム(勢いがあるかどうか)を理解して、ゲームのテンポをコントロールしたいです」
身長170センチ、体重75キロの31歳。テストマッチデビューを果たす前だった2015年、オークランド代表としてニュージーランドの地域代表選手権に出場した。
現所属先のトヨタヴェルブリッツでは、現NECグリーンロケッツ東葛から移って2年目の2018年度からプレー。19年のワールドカップ日本大会でも、大会登録メンバーとなった。
大舞台でのチャンスは、限られてきた。ワールドカップでは出番がなく、昨年の日本代表活動時も先発は6試合中2回。初選出から間もない齋藤、2019年ワールドカップ組の流大らと定位置を争い、メンバーに入れないことも3度、経験した。
今年も「昇格」が求められた。
6月3日からの約2週間、代表予備軍のナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)として活動した。
その隊列で挑んだ18日のウルグアイ代表戦(東京・秩父宮ラグビー場/〇34-15)では途中出場で14キャップ(テストマッチ=代表戦への出場数)目を得たが、代表本隊への昇格はいったんお預けとなった。
25日、主力の揃う日本代表が福岡・ミクニワールドスタジアム北九州でウルグアイ代表戦を43-7で下したことには、当事者と異なる立場で触れた。
しかし、今度のフランス代表戦では9番をつけられる。27日までに追加招集され、齋藤が最短でも3日まで隔離されるのを受けて機会を得た。
「僕は合流して1週間も経っていないですけど、コミュニケーションを取りながらいい練習ができていると思います。あまり自分の役割外のことをやるのではなく、役割を実行する。チームでいいプレーができるようにしたい。テストマッチなので、勝つことに集中してやりたいです」
外的要因に左右されない。チームの戦法を信じて遂行する。現体制のジャパンの作法に倣いつつ、存在価値を証明したい。