来日中のラグビー フランス代表が柔道の聖地『講道館』を訪問。師範に指導受ける
柔道の総本山・講道館で、仲間と向かい合うたびに頭を下げてから組み合い、離れてからも必ずお辞儀をしているフランス人がいた。
2021-2022年シーズンにラ・ロシェルでフル回転。WTB、CTBとしてトップ14、欧州チャンピオンズカップに合わせて28戦出場したジュール・ファーヴルだ。
6月30日午前、来日中のフランス代表が講道館を訪れた(選手7人、コーチ1人、スタッフ13人の計21人)。
アテネ五輪、北京五輪で金メダリストとなった谷本歩実さんが繋いだ縁がきっかけで、「日本の伝統ある柔道を見たい」というフランス代表の願いが実現した。
ファーヴルは、今回の来日メンバーの中に数人いる柔道経験者のひとり。少年時代にも講道館を訪れたことがある。
師範の方々のレクチャーを受け、前男子日本代表監督の井上康生氏(現・全日本柔道連盟ブランディング戦略推進特別委員会委員長)監督の模範演技を目の当たりにした23歳は感激の表情で「講道館で、有名な先生に教わることができて大変嬉しく、感激しました」と話した。
柔道経験者として「丁寧で教育的なマナーを身に着けれられて良かった」と言う。
「礼法を学び、相手を尊敬する。価値が高い競技なので、フランスでも人気がある。子どもに柔道をさせたい親は多いと思います」(今ツアーのベルナール・ヴィヴィエ団長の3人の息子も柔道経験者)
柔道で学んだことをラグビーで活かしている。
「相手の力を使い、投げていた経験は利用できます。また、相手を崩すことも」
人と組み合った感覚があるから、タックルへの入り方もうまい。
模範演技を披露するなど、代表団をもてなした井上前監督はラグビーが好きだ。2015年、2019年のワールドカップも観戦し、現在のフランス代表についても、関係者に「2023年大会の優勝候補」と聞いた。
「そんなチームが(柔道見学を)選んでくれたのは光栄なこと」と表情を崩した。
選手たちの動きを見ていて、「師範の方々の指導をスムーズにやれていた。運動能力が高いと分かった」と話した。
「(コロナ禍のレギュレーションもあって控えたが)本来であれば、直接組みたかった。柔道経験者もいたようなので、もっと深い交流ができたと思います」
前監督は、世界トップクラスのチームが柔道に関心を寄せたことについて、「喜びと誇りを持つべき。今後も、そう言ってもらえるようにしたい。国内でも、柔道界の価値をもっといい形で発信していきたい」と、あらためて競技の価値を高める覚悟を口にした。
「柔道が他のスポーツにもつながり、その動きが役立っていく。そういったものが生まれるといいですね」
ラグビー日本代表も、交流を通してパフォーマンスを高められる可能性はある。
柔道が盛んな国での2023年のW杯で、その成果が発揮できたら最高だ。