日本代表 2022.06.10

「ジャパンにフォーカス」までの背景。2022年のワーナー・ディアンズ。

[ 向 風見也 ]
「ジャパンにフォーカス」までの背景。2022年のワーナー・ディアンズ。
若手有望株のひとりであるワーナー・ディアンズ。宮崎合宿で汗を流している(撮影:松本かおり)


 相変わらずチーム最年少だ。

 昨秋、日本代表デビューを果たした20歳のワーナー・ディアンズが、6月3日からの同代表合宿に参加。8日の練習後、宮崎県内のグラウンドで取材に応じる。

 現在チームにいる正規メンバー(練習生、日本代表候補、ナショナル・デベロップメント・スコッドは除く)の33名中、初選出は5名。その他、2016年秋就任のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチに初めて声をかけられた選手も3名いる。

 近年、経験者を重用してきた現体制下にあっては、新顔の多さが目立つ。報道陣がその話題に触れると、ディアンズは「自分もまだ、若い選手です。一番、若い」と笑う。確かに、ニューカマーを含む全選手がディアンズより年上だった。本人は続ける。

「僕、まだ、新しい選手なので、頑張って試合に出ることに集中しています。あまりテーマとかはないですけど、フィジカルプレーをして、自分の身長を活かしてプレーするのにフォーカスしています」

 日本代表戦デビューは2021年11月13日。敵地でのポルトガル代表戦で、後半36分からプレーした。その約7か月半前までは流通経済大学付属柏高校に在籍しており、高校卒業後すぐに入った東芝ブレイブルーパス東京(現名称)では公式戦に出ていなかった。

 身長201センチ、体重117キロという国内最大級のサイズと機動力を兼備し、将来が嘱望される。テストマッチを経験した約2カ月後には、国内リーグワンで4強入りするチームで実戦17試合中15度、出場。国内の真剣勝負にあって、フットワークの巧みさ、タフさを証明した。

 今度の代表ツアーでは、ウルグアイ代表、世界ランク2位のフランス代表と組まれた計4つのテストマッチのうち3試合で出場機会をうかがえる。自分に言い聞かせるように言う。

「まだ若いからフィジカル、どうかな…って(周りに)言われているけど、自分自身は、強いと思うので。それを活かしてプレーしたいです」

 幼いころに目指していたのは、同国代表オールブラックスだ。母のターニャさんはネットボールのニュージーランド代表だったため、親子で国を代表するのは家族の夢でもあった。

 昨秋、日本代表としてポルトガル代表戦に出た直後の心境を、ディアンズはこう吐露したこともある。

「試合に出た後、これでオールブラックスになるのは難しくなるな、とは思いました」

 ワールドカップを目指すチームの一員となれて嬉しかった一方、少年時代の目標から遠ざかった事実を静かに受け止めるほかなかった。

「いまは、ジャパンにフォーカスしているから(それ以外のことは)あまり考えてないですけど」

 現行ルールのもとでは、最初の代表チームで最後に試合に出てから3年以上、経過した選手は、条件付きで1度だけ別な国、地域の代表へ転じることができる。

 ディアンズの場合、もし日本代表を3年以上、離れることがあれば、出生国のオールブラックスへチャレンジできる。

 宮崎でその件について問われ、ディアンズはこう言葉を選ぶ。

「いまのところは、日本代表に集中しています。その先、どんなことがあるかはわからないですけど、いまは日本代表でプレーしたいです」

 長谷川慎アシスタントコーチの教える低いスクラムには、「組みやすいです。周りの人が助けてくれる。前の方(で組む選手)も日本代表だから」。スムーズに身体を折りたたんで適応しながら、先輩方の資質を貴ぶ。

 空中戦のラインアウトについては、自身と同じLOでもプレーできるジャック・コーネルセンと細かな打ち合わせをする。

「外国人とは英語がしゃべれるし、日本人とは日本語がしゃべれるから、うまくコミュニケーションは取れているかなと」

 2022年のディアンズは、日本代表の主力候補だ。

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