「気がつけばカストル」? フランス・トップ14、いよいよプレーオフへ。
トップ14(フランス最高峰リーグ)はレギュラーシーズンの戦いが終わった。
現地時間6月5日の最終節は、プレーオフ進出あるいは残留をかけて、またトップ14の上位8チームに与えられる来季の欧州チャンピオンズカップ出場権の獲得のために、どの試合も決勝戦さながらの激しさだった。
前年度チャンピオンのトゥールーズは、すでに降格が決まっているビアリッツ相手に12トライを決め、80-7で勝利、プレーオフへの意気込みを見せた。
今季の欧州チャンピオンズカップで優勝したラ・ロシェルは、同チャレンジカップで優勝したリヨンと対戦、前半はリヨンが19-5とリードして折り返したが、後半ベンチから主力選手を放ったラ・ロシェルが続けてトライを獲り逆転、欧州王者の強さを示し、準々決勝に駒を進めた。
一方、前週のチャレンジカップ決勝でリヨンに敗れたトゥーロンはラシン92と対戦、善戦するも60分過ぎに逆転したラシン92がそのまま勝ちきりプレーオフ進出を決めた。
前節終了時に首位だったモンペリエは、クラブのレジェンドSHモルガン・パラとSOカミーユ・ロペスの最後の試合を勝利で飾りたいクレルモンに敗れ、また2位だったボルドーも、2部リーグとの入れ替え戦を避けるためになんとしてでも勝利がほしいペルピニャンの気迫に屈した。
その間に、3位だったカストルがポーに勝利して首位でレギュラーシーズンを終えた。現地メディアは「物音も立てずに気がつけば1位」、「今まで姿を潜めていたカストルが突然首位に浮上」という表現を使う。カストルは、スター選手や代表選手を多く抱えるトゥールーズやラ・ロシェル、トゥーロンのように日々メディアに取り上げられることはない。しかし、「僕たちはずっと努力を続けている。メディアが僕たちを見てないだけ」とアルゼンチン代表SOベンハミン・ウルダピジェタが言うように着実に強化を続け、確実に勝ち続けてきた。今季、唯一ホームで負けなしのチームだ。
「首位になれたのは偶然ではない、狂ったように練習してきたからだ」とカストルのピエール=アンリ・ブロンカンHCは言う。「このチームにはトッププレーヤーはいない。しかし選手たちは自分たちのラグビーを信じ、その強さを最大限に引き出している。敵にディフェンスでプレッシャーをかけ、徐々に相手の首を絞めるように苦しめる。このラグビーこそがチームのアイデンティティーだ」と続ける。
カストルは、2018年、2013年にも優勝している。その時もカストルの優勝を予想していた者は少なく、サプライズと言われたが、激しいコンテストで相手にプレッシャーをかけ、相手のプレーを崩すスタイルは当時から変わっていない。「退屈なプレー」だと批判されることもあるが、「それがカストルのアイデンティティーで、カストルの人が好きなラグビーなのだ」と話していたのは2018年にカストルを優勝に導き、現在はボルドーのHCを務めるクリストフ・ユリオス氏だ。しかし今季は攻撃のオプションの幅を広げ、対戦相手から読まれにくくなったと言われている。
また、この日の対戦相手のポーのセバスチャン・ピケロニHCは「カストルはシンプルなことを高いインテンシティーでできる、波がなく安定したチーム。地域にしっかり根付き、地元の人のエネルギーを味方につけている」とコメントする。
「カストルは人口4万人の小さな街で、ラグビーしかなく、人々はラグビーに熱中している。試合に勝った日の街は最高だ」とブロンカンHCは話す。
リーグ戦の上位2チームは、直接2週間後の準決勝に進出する。選手は休養をとりリフレッシュできる反面、試合の感覚を失うリスクもある。チャンピオンズカップのプレーオフを逃したカストルは、5月は1試合しかしておらず、この日も「2週間ぶりの試合でリズムを失っていた。このままの状態で準決勝に臨むと惨敗する。今週は日曜日も返上してハードなトレーニングをする。選手もそれを望んでいる。カストルには最新鋭のトレーニング施設はないが、しっかり練習をするために必要なものは全て揃っている」とブロンカンHCは最後の仕上げに取り掛かる。
昨年の決勝戦のリメイクとなるトゥールーズとラ・ロシェルで争われる準々決勝の勝者がカストルと準決勝で対戦することになる。どちらが勝ち上がってきても強敵だ。果たして今回も「気がつけばカストルが優勝していた」と言われる結果になるだろうか?