【車いすラグビー日本代表】『2022 Canada Cup』で、フランス、イギリスに勝つ。3連勝!
カナダ・リッチモンドで開催されている車いすラグビーの国際大会「2022 Canada Cup」。初戦で勝利し勢いに乗る日本(世界ランキング2位)は現地時間の6月3日、フランス(同5位)、イギリス(同3位)との予選ラウンド2試合に臨み、チーム一丸のプレーでヨーロッパ勢に圧勝した。
開幕から3連勝だ。
「1、2、3、日本!!」
ヨーロッパチャンピオン・フランスとの1試合目。アーチ状の高い天井にチームジャパンの威勢のいい声がこだますると、ティップオフから鉄壁のディフェンスがフランスの攻撃を阻んだ。
フランスの連続ファウルにより3点を先取した日本は、池透暢と池崎大輔がジョナサン・イベルナを徹底的にマークした。ジョナサンは、東京パラリンピックでは1試合平均30.8点を叩き出しトライ王に輝いた選手だ。攻撃の要を抑え込まれたフランスは苦しい展開を強いられた。
日本はコートの高い位置から2次、3次…とディフェンスを仕掛け、まるで“シャンパン・ディフェンス”とも言うべき美しいディフェンスが機能する。トライゾーン前の「キーエリア」と呼ばれる最後方の攻防でも、フランスにタイムアウトを取らせるなど強さを見せつけた。
「日本が目指すのはチームラグビー」
ケビン・オアーヘッドコーチの言葉を体現するかのような日本のラグビーが存在感を示した。
なかでも、障がいの比較的軽いハイポインターの派手なプレーの裏で、頭をフル回転させてコートを動き回る倉橋香衣のディフェンスがひときわ目を引く。
倉橋の車いすがジョナサンの行く手を阻み、日本に優位なシチュエーションをもたらした。
27-21。日本の6点リードで迎えた後半だった。
ジョナサンが車いすトラブルのため一時コートを離れる。その間にも2、3分ごとにラインナップを替え、日本はさまざまなバリエーションでリズムを変幻させた。
どんなにリードを広げようとも勝ち方にまでこだわる。
試合時間残り3.2秒からのラストプレー、一番障がいが重いクラスの長谷川勇基が橋本勝也からのパスを全力でキャッチして渾身のトライ。
直後に試合終了のブザーが鳴り、50-39で勝利した。
各ピリオドでスタートを任された池崎大輔は、「どのラインナップも戦術がはまって、チームとしてプレーできたのが勝因」と試合を振り返った。「ディフェンスはまだまだ完璧ではないが、チーム一丸となってのパフォーマンスに貢献できるようにしたい。日本で応援してくれている人に勇姿を見せたい」と活躍を誓った。
その4時間後におこなわれたイギリスとの一戦では、荒い息づかいが聞こえてくるほどの運動量の多い試合が展開された。
東京パラリンピックで金メダルを獲得したイギリスは、エースのジム・ロバーツが引退し、新たな戦力の強化に積極的に取り組んでいる。
今回の出場メンバーのうち東京大会に出場したのは半数の6名だけ。2月のヨーロッパ選手権で3名、今大会で2名の選手が代表戦デビューをしている。
また、女子選手2名がメンバー入りしているのも特徴的だ。
東京パラリンピック準決勝で対戦した時とは様変わりしたイギリスだが、スピードを兼ね備えたラインナップに、日本にとってはタフな状況が続いた。
特に、一番障がいが軽いクラスの女子プレーヤー、フェイ・ウエストのスピードと機動力は、今後新たな脅威になりうる印象を受けた。
それでも立ち上がりからの連続得点により、焦ることなく、自分たちのプレーにフォーカスすることで徐々に対応した。
壁谷知茂、菅野元揮、白川楓也がプレータイムを伸ばし、新たなラインナップを積極的に起用する大胆な戦略で対抗した。
後半、日本が10点差以上のリードを保ったところで、イギリスは終盤に女子選手2名が同時に入るラインナップをコートに送り込んだ。日本の倉橋もコートにいたため3名の女子選手がプレーする新鮮な光景が目に映った。
女子選手が増えることが素直に嬉しいと語る倉橋は、「車いすラグビーは男女混合競技なんだと知るところからのスタートだと思うが、それが普通になったらいいな」と笑顔を見せた。
試合は64-50で日本が勝利を収め、開幕から3連勝。時差のため深夜、早朝におこなわれる試合を応援してくれる日本のファンに、嬉しいニュースを届けた。
予選ラウンド最終日の6月4日、日本は世界最強と名高いライリー・バットを擁するオーストラリア、そしてここまで日本と同じく3戦全勝の地元・カナダとの2試合に臨む。