【コラム】再浮上した国際大会新設構想。日本の未来やいかに
5月9日、2022年度の男子15人制日本代表の候補選手が発表された。63人のリストには、過去2シーズン代表活動から離れていた大ベテランの堀江翔太や、フィニッシャーとして期待される竹山晃暉、根塚洸雅ら活力に満ちたニューカマーの名も含まれる。5月中旬からスタートする合宿を経て、最終的な代表スコッドがどのような構成になるのか。そしてそのチームが、6、7月に行われるウルグアイおよびフランスとのテストシリーズでいかなるパフォーマンスを見せてくれるのか。具体的な顔ぶれが明らかになったことで、思い描くイメージもより明瞭になってきた。
そうした中、気になるニュースが同日夜に発信された。国際統括機関のワールドラグビーが、新たな地球規模の大会の創設を計画しているという。複数の英国メディアが報じた。
内容はこうだ。参戦するのは伝統のシックスネーションズを構成するイングランド、フランス、アイルランド、イタリア、スコットランド、ウエールズの北半球勢と、オーストラリア、アルゼンチン、フィジー、ニュージーランド、南アフリカの南半球勢に日本を加えた12か国。北半球6か国と南半球6か国(日本は南半球側にカテゴライズされる)の2つのプールに分かれ、それぞれの国が別プールの6か国と対戦する。開催時期は7月と11月で、7月はヨーロッパ勢が南半球に遠征して各3試合ずつを行い、11月は南半球勢がヨーロッパへ渡って残りの3か国と対戦。そして11月の第4週にプレーオフを実施する。
この新しい南北国際対抗戦は、ラグビーワールドカップとブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの南半球ツアーが行われる年を除いた年に隔年で開催され、2026年のスタートを予定しているという。計画は現在アイルランドのダブリンで開かれているワールドラグビーの理事会で議論され、ガーディアン紙はこれが実現すれば「ラグビー競技における1995年のプロ解禁以降最大の変革」と表現している。
新たな国際大会の創設案は、2019年にもワールドラグビー内で持ち上がり、構想が二転三転した末に頓挫した経緯がある。この時は1部リーグから漏れたティア2国からの猛烈な反発があったことに加え、一部の国が昇降格制度を含むフォーマットに強硬に反対し、ゲームスケジュールのさらなる過密化に懸念を示す国際的な選手会からの賛同も得られなかったため、「ネーションズ・チャンピオンシップ」と銘打たれた大会の構想は幻に終わった。それに対し今回の提案は、「選手を含むすべての関係者からの幅広い合意」(ガーディアン)を得ており、いくつかの克服すべきハードルは残っているものの、前向きに進展していくと予想されている。
ワールドラグビーにすれば、現在もすでに国際交流期間(ウインドウマンス)と定めている7月と11月に南北対決のテストマッチが行われており、それを一括して大会化し注目度を高めるのは、さほど手間もかからず多大なメリットを享受できるという思惑があるのだろう。新型コロナウイルスのパンデミックで思うように試合を開催できなくなり、財政的に疲弊した各国のユニオンが収益を上げる機会を切望している状況も、追い風になっているのかもしれない。
ヨーロッパや南半球の強豪国と対戦が限られる日本も、受ける恩恵は多い。シックスネーションズの6か国と毎年テストマッチを戦うことができ、うち3試合は国内で開催となれば、強化はもちろん財政の面でも大きなプラスだ(酷暑の7月に日本のどこで試合を行うかという問題はあるが)。当時のネーションズ・チャンピオンシップ構想に合わせるため、従来の国内のラグビーカレンダーを大幅に変更し、サンウルブズのスーパーラグビーへの継続参戦を断念してまで1月から5月の開催に移行したリーグワンのスケジューリングも、ようやく当初の目的にかなうことになる。
もちろんいいことづくめというわけではない。もし2部トーナメント(こちらはアメリカやトンガ、サモア、ジョージアなどティア2国を主体に構成され、2024年からスタートする可能性もある)に降格すれば、ワールドカップを除いてティア1国とテストマッチを戦う機会はほぼなくなる。1月から5月にリーグワンでプレーし、6月から7月は代表活動、束の間のオフを挟んで9月中旬から11月いっぱいまでふたたび代表で合宿と欧州遠征をこなして、12月からは所属クラブに戻ってリーグワンの準備――となると、選手の心身への負担も大幅に増すだろう。