国内 2022.05.05

1年目からリーダーの奥村翔は言う。ブルーレヴズは「一番、熱いチーム」!

[ 向 風見也 ]
1年目からリーダーの奥村翔は言う。ブルーレヴズは「一番、熱いチーム」!
4月17日のサンゴリアス戦で果敢にランで攻め上がる静岡ブルーレヴズの奥村翔(撮影:松本かおり)


 ゴールキックを外したことについて、自ら切り出す。

 静岡ブルーレヴズの奥村翔は4月23日、本拠地のエコパスタジアムでのトヨタヴェルブリッツ戦で15-18と惜敗していた。

 序盤から看板のスクラムで優勢に立ち、組織的な動きで何度も相手防御を攻略していたが、トライを決めた後のコンバージョンをすべて失敗。最後尾のFBで先発した正キッカーの奥村は、このように述べた。

「キック、1回目に外したキックのことを『さっき、右にそれたから…』と考え、メンタル的に引きずってしまったのが反省です」

 身長180センチ、体重83キロの23歳。昨春、前身のヤマハ発動機ジュビロに入るやさっそく公式戦で先発入りを果たしている。今季も鋭いカウンターと正確なキックでレギュラーに定着するが、当の本人はその立場に満足しない。同じ位置の日本代表選手と比較し、レベルアップを目指す。

「自分自身に期待してくださることはうれしいですが、まだそれに実力が伴っていないと思います。自分自身に追い打ちをかけて、姿で見せたいです。トライを取り切れる選手(になりたい)。また、いまの日本代表ではキックの正確性が不可欠なので、そこもしっかり高めたいです」

 LOの大戸裕矢主将いわく、「スピードもあるし、バックスリー(後衛3人)のリンクも、裏のスペース(のカバー)にも豊富な運動量で(対応する)。コンタクトも強いですし、肝も据わっているので頼もしいです。いい意味で、先輩を恐れていないです!」。ものおじせずに集団に火をつける資質が買われ、部内に複数いるリーダーの1人となっている。
 
 チームの戦略上の柱である「5Hearts」のうち、攻守の切り替えを意味する「Hoka」という領域をFLの松本力哉と引っ張る。

「自分は、グラウンド内外でストレートにものを言っちゃうので…。まぁ、遠慮してもいいことはないです」

 社員選手でもある。責任企業であるヤマハの「PF車両開発統括部SV開発部SP設計グループ」へは、シーズン中も「週に2回」は顔を出すという。

「応援してくださっているので。顔を出して、『あのプレーよかったね』『あのプレーはちょっとどうなの?』と言ってくださるなか、コミュニケーションをとっています」

 京都の洛西ラグビースクール、伏見工を経て帝京大では副将を務めた。1年時に大学選手権9連覇を経験も、2年目以降は頂点から遠ざかった。

 副将を務めた最終学年時は秋口から好調を維持も、大学選手権の準決勝で敗退した。足りなかったものについて聞かれれば、「燃え尽きること」と即答する。

 主将だった松本健留(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安)、尾崎泰雅(東京サントリーサンゴリアス)は、やがて早々とリーグワンで出番を得るほどの実力者だ。戦力面では他校とそん色はなかったと感じるから、敗因は無形の力に見出したくなる。

「それなりのスキル、実力はあったと思うのですが、どこかしら、一生懸命になって燃え尽きるということができなかったのかなと思います」

 戦力を整えるだけで勝てるほど、ラグビーはたやすくない。いまでは別な意味で、そう実感できる。

 ブルーレヴズは小柄な選手を揃え、奮闘するFW陣の先発に190センチ以上の選手が1人しかいない時も多い。それでも今季のリーグワンでは、トップリーグ最終年度を制した埼玉パナソニックワイルドナイツに25-26と迫った。

 それと前後し、日本人選手の学生時代の実績、海外出身者の人数や経験値で向こうが上回っている試合でも、白星をつかんでいる。プレースタイルの徹底によってだ。

 ヤマハ時代の練習を見学して入部を決めた奥村は、「たぶん、リーグワンで一番、熱いんじゃないですか」。堀川隆延監督からの入部前のラブコールに、偽りはなかったと思える。

「俺たちにしかできないラグビーが、ある。それで勝ちいくんだ」

 ここまで5勝10敗のチームは5月8日、本拠地のヤマハスタジアムでレギュラーシーズン最終戦をおこなう。相手は、4強入りに近づく東芝ブレイブルーパス東京だ。青いジャージィに白い襟の15番は、「レヴズスタイルを体現するだけ。個人としては、キックとトライを(決める)」と誓う。

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