コラム 2022.03.29

【コラム】「ホーム」でなく「ホスト」。

[ 直江光信 ]
【コラム】「ホーム」でなく「ホスト」。
2016年からはリコー(現BR東京)にも所属したモスタートは、南アキャップ49のLO(撮影:平本芳臣)

 正確な時期はもう忘れた。たしか2019年のラグビーワールドカップ日本開催が決まった2009年の夏頃の話だ。小学生世代のラグビー指導に携わるコーチが集まる会合で、故郷の大先輩にいわれた。

「自国開催でホームアドバンテージがあるのは大きいというのもわかるけど、本当に大事なのは、他の国に日本でワールドカップを開催してよかったと思って帰ってもらうことでしょう。来てくれたチームをもてなすのが、ラグビーの文化じゃないですか」

 その人物は長年、九州中の少年少女ラガーが参加する伝統の交歓会の運営に携わってこられた方だ。競技力が違えば指導方針も違うさまざまなカラーのチームが集う大会で、煩雑な取りまとめを担ってきた。面倒が起こることも少なくない中、いつもニコニコ笑顔をたたえ、口調はどこまでも穏やか。そんな人の言葉だったから、核心を突くフレーズは心に残った。

 いつか原稿に引用させてもらおうと記憶のノートにしたためていたひと言を持ち出したのは、各地でリーグワンの試合を観戦するたびに、あらためてこの視点こそがラグビーのアイデンティティになると確信したからだ。

 リーグワンでは、自チームが主催する試合と相手チームが主催する試合の2回戦制で行うリーグ戦を、「ホームアンドアウェイ」ではなく「ホストアンドビジター」の呼称に定めた。いまはっきり英断だったといえる。

「ホスト」という言葉には、単に催しを開くだけでなく、訪れる人を歓待する主人の意味もある。当然ながら訪れる人の中には、自チームを応援するサポーターのみならず、特定のひいきを持たないファン、さらには相手チームとその熱烈な支持者も含まれる。そうしたすべての人々に、「この試合に来てよかった」と思って帰ってもらってこそ、ホストゲームの成功なのだ。

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