その他 2022.03.28

日本協会がラグビーにおける脊髄損傷への再生医療適応プロジェクト始動 研究機関にも協力

[ 編集部 ]
日本協会がラグビーにおける脊髄損傷への再生医療適応プロジェクト始動 研究機関にも協力
首をけがしてストレッチャーで運ばれるラグビー選手。写真はプレミアシップから(Photo: Getty Images)


 日本ラグビーフットボール協会は、再生医療領域において各専門家が取り組む、ラグビー競技における脊髄損傷への再生医療適応プロジェクトを始動し、研究機関の取り組みに協力することを決定したと発表した。

 このプロジェクトは、ラグビーワールドカップ2019(RWC2019)日本大会のレガシーを持続させるための取り組みとして、RWC2019レガシー実行特別委員会資金管理等規程に基づき運用される。

 協力する研究機関の取り組みは以下のとおり。


(1)脊髄損傷へのiPS細胞による脊髄再生医療適応条件に関する研究費として

・寄付先:慶應義塾大学医学部 整形外科学教室 中村雅也教授
・寄付金額:7,500,000円
・入金予定日:2022年3月28日

(2)ラグビー等スポーツ選手における脊髄損傷に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療の最適化の研究並びに教育研究等の奨励として

・寄付先:札幌医科大学 整形外科 山下敏彦教授
・寄付金額:7,500,000円
・入金予定日:2022年3月28日


■森重隆 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長 コメント

「ラグビーワールドカップ2019日本大会での重症外傷、脳振盪数は2015イングランド大会に比べて減少しました。大会の成功に日本のメディカルチームが大きく貢献し、日本の医療レベルが高いことは国際的にも認知されております。その一方でラグビー競技における脊髄損傷への対応は国際的な社会問題であり、当協会でも『安全なラグビーの普及・徹底』を掲げ、さまざまな取り組みをおこなっております。今回、この再生医療適応プロジェクトが始動することで、ラグビー競技における脊髄損傷への再生医療の適応への可能性、システムの確立へ寄与できればと考えております」

■玉塚元一 一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン理事長 コメント

「本プロジェクトの始動に際し、関係者の皆さまの多大なご尽力に、ジャパンラグビーリーグワンを代表して敬意を表します。日本ラグビーフットボール協会が推進する『重傷事故撲滅』と『安全なラグビーの普及・徹底』は、リーグワンの運営や取り組みにおいても非常に重要なことです。ラグビープレーヤーが安心して競技ができる環境の確保のために、ラグビー界も一丸となって取り組んでまいります。本プロジェクトが、プレーヤーウェルフェアの更なる向上へ向け、新たな一歩となることを期待し、当分野の研究のご発展を祈念しております」

■中村雅也 慶應義塾大学医学部 整形外科学教室 教授 コメント

「スポーツ外傷において脊髄損傷は最も重篤な外傷の一つであり、特に激しいコンタクトスポーツであるラクビー競技における脊髄損傷への対応は喫緊の課題です。これまで治療法のなかった脊髄損傷に対するiPS細胞を用いた脊髄再生医療の実現は長年の悲願であり、本プロジェクトを通して、iPS細胞由来神経前駆細胞移植の一日も早い臨床応用のための基盤の構築を目指していきたいと思います」

■山下敏彦 札幌医科大学 整形外科 教授 コメント

「札幌医科大学では、2019年より脊髄損傷患者さんに対する自己骨髄間葉系幹細胞製剤(製品名:ステミラック®注)の静脈内投与による治療を開始しています。これは、厚生労働省の条件・期限付き承認に基づくもので、すでに70例以上の脊髄損傷症例に対しステミラック投与をおこない、比較的良好な機能回復が得られています。投与症例の中には、スポーツに起因した脊髄損傷も含まれています。この度、日本ラグビーフットボール協会のプロジェクトのご支援をいただくことにより、ラグビーによる脊髄損傷患者さんの救済に貢献できることを大変嬉しく存じます。また、今後さらに有効な治療法の開発にも取り組んでいく所存です」

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