【ラグリパWest】女将の観戦哲学。東屋あさ子[花園ラグビー酒場]
母にも悩みはある。
「お客さんには悪いけど、4月から値段を上げなあかん。練り物を含め仕入れが上がってる。このままやったらやっていかれへん」
コロナや今の世界の情勢を鑑みて、や。
生ビールは樽生中ジョッキ330円、酎ハイは350円、あてのコロッケは150円、人気で一番値の張るXOジャン焼きそばでも600円や。税込みやで。この値段からやったら、上げてもみんな文句を言わんとは思うけどな。
ちなみにお酒はすべてサントリー製品。初代のオーナーが「ラグビーと名づけるなら」とサンゴリアスに統一した。母は1996年の開店から手伝い、翌年、店を継いだ。得意先は変えん。さすが、義理と人情の河内の女や。
「他社のビールしか飲まん、っていうお客さんもいる。たしかに初めの一杯はちゃうけど、酔ってきたらみんな一緒。私は飲まんけど」
どないやねーん。
アルコールはガソリンにならない母なりの観戦の仕方を話す。
「試合の始まる1時間前くらいに行って、グッズを見て、買ったりする。それで座って試合の前の練習を見る。個人のプレーがはっきり見えるからええよ」
プロ野球のスカウトも試合前のノックから見る。「よくわかる」って。その人らと同じレベル。通やな。
「私は基本的にひとりで試合を見る。その方が興奮できる。横でなんやかんや言われたら腹が立つ。私の目線で見たい。それでええ試合やったら、負けても腹は立たへんよ」
ラグビーのええところは、ぶつかり合い、と言うで。
「がっちゃーんやね。手え抜けへん。抜いたら大ケガや。あの一生懸命さが大好き。それに、選手のニコーっとした顔を見ると、もうなんでも許してしまう。年いってるのにいきいきできているのは、ラグビーのお蔭や」
7年ほど前、失礼を顧みずお年を尋ねたら「38」。今回は「47」。どういう年の取り方してんねーん。
「人生、楽しくせな損。人はアホか、というかもしれんけど、私は幸せ、それでええ」
ラグビーを気分転換にして、母はお店を回す。お酒は売るけど、不調法やから、飲まれることはない。勝ち負けに関わらず、毎回、しらふで応援を続けます。
花園ラグビー酒場
■住所・電話 〒578−0924 大阪府東大阪市吉田1−2−22 ※近鉄河内花園駅から徒歩1分ほど。改札を出て右へ。花園商店街入口の左。
072−962−6171
■営業時間 午後5時〜同10時(ラストオーダーは9時45分)
■店休日 日曜、祝日、ご贔屓チームの遠征時は臨時休業あり
■収容人数 このご時世に逆らって、詰めたら50人ほど