日本代表指揮官ジョセフ視察のもと…。大ブレイク中の根塚洸雅は「小さいことも真剣に」
示すのは爽快感だ。
3月11日夜、東京は秩父宮ラグビー場。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのルーキー、根塚洸雅が、加盟するリーグワンの首位決戦で背番号11をつける。
第7節のデビュー以来、3戦連続での先発機会だ。昨季のトップリーグ・プレーオフ準決勝で敗れた東京サントリーサンゴリアスを前にしても、「自分の役割にしか、フォーカスしていなかったです」。身長173センチ、体重82キロの23歳が意識するのは、ハードワークである。
「自分は身体が大きくないので、仕事量、小さいことでチームに貢献しないと(試合に)出続けることが厳しくなる。こつこつ、小さいことも真剣にやろうというマインドでいます」
12-17と5点差を追う前半31分頃、自陣10メートルエリア左中間でタックル。昨季のトップリーグのトライ王で、自分より9センチも大きなテビタ・リーの足元へ刺さる。すぐに起き上がるや、ボールがつながる左端へ先回り。日本代表経験者の尾崎晟也の懐にもぶつかり、攻守逆転を促す。
後半12分には、自陣22メートル線エリアでタックルミスを犯す。対面の右WTBである尾崎を捕らえにかかるも、弾かれてしまう。トライを与えて19-27と点差をつけられるが、このままでは終わらなかった。
「受け(身)になっている時間帯があった。取り返したい」
24-33とされていた後半34分。自陣10メートル線エリア付近右のラインアウトからパスが経由され、左中間の根塚に渡る。黒いヘッドキャップをつけた「11」は、左外へ鋭い弧を描くようなコースをとって向こうの防御をかわす。タッチライン際を疾走する。
「あそこでは、相手が内(側)に寄っていて、外にチャレンジできると思った」
司令塔のSOに入っていた岸岡智樹とのパス交換を経て、ゴール前まで進む。サポートについていた藤原忍に渡し、接点を作る。本来は藤原がパスの供給源にあたるSHであったのを踏まえてか、根塚がその接点で球をさばく。
さらには左PRの羅官榮を援護し、攻めを継続させる。最終的にはFLのトゥパ フィナウのトライに喜ぶ。29-33。
「思い切りプレーしようと考えていたら、ボールをもらえた。うまくいったなと」
結局はそのまま惜敗して「ディシプリン(反則数で相手より9つ上回った)」について悔やむが、前向きに次を見据える。
「僕たちの大胆なアタックの選択に関してはよかった。ポジティブに次につなげていければと思います」
幼稚園の年中組だったころ、兄の聖冴(現・三重ホンダヒート)とともに尼崎ラグビースクールで競技を始めた。東海大仰星高を経て法大に入ると、当時のトップリーグに加盟する複数のクラブからラブコールを受ける。
進路に悩んでいたのは大学3年のころで、当時のスピアーズは4強入りを果たすよりも約2年前にあった。それでも、会社説明や施設見学をもとにいまのクラブを選んだ。船橋のグラウンドからにじむ「ファミリー感」が気に入ったからだ。
採用を担当する前川泰慶チームマネージャーに頼んで試合観戦をさせてもらうと、「接戦で勝ち切るイメージ」が抱けたのもよかった。
「接戦で勝つためのプロセスを作っている。逆に(自身がプレーしていた)法大は接戦で負けていたことも多かったので、ここ(スピアーズ)ではいまと違うことができるのではと、入る気持ちが固まりました」
いざ入部すれば、オーストラリア代表71キャップのバーナード・フォーリーら、大物外国人選手ともフランクに討議できる。昨年4月からプレー可能だった最後のトップリーグでは出番がなかったものの、今度のリーグワンでは中盤戦で台頭。特に、相手にほぼ触られずに防御を破る「クリーンブレイク」の数をリーグ2位の「10」とする。
サンゴリアス戦前に至っては、「9」でリーグトップ。有数の突破役を抑えての快挙を、本人はSNSで知ったという。
9日にオンライン取材に応じ、「すごいメンバーのなかで1位にいられるのはシンプルに嬉しい、というのと…」。誇れる記録からも、検討課題を見出していた。
「自分の場合は、クリーンブレイクをトライにつなげられているかといえばそうでないかなと。クリーンブレイクをしたら、周りの人をうまく使ってトライにつなげるビックアタックに変えたい。味方の位置を見て、どういうランコースをたどればいいかを勉強し、試してやっていきたいです」
学生時代はいま働くタッチライン際のWTBのほか、グラウンド中央のCTB、FBを任されていたとあり、「WTBで試合に出るのが久しぶり。ライン際でどう(敵を)抜くかが身体にしみついてはないので、もっといろいろ試したいなと思います」。さらなる爆発を匂わせた。
ちなみにサンゴリアス戦時は、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチが視察に訪れていた。将来の日本代表入りを目指す根塚は「それは全然、知らなかった」と前置きし、改めて自分にベクトルを向けた。
「特にアタックでは思い切りのいいランニングができてよかったです。ただ、キックへのケアの遅さは課題。改善していこうと思います。それと、尾崎選手にトライを取られたのは悔しかったです。これも、次につなげたいと思います」
自分の伸びしろを自分で作り出し、自分で埋めてゆく。19日の東芝ブレイブルーパス東京戦でも、スピアーズの「11」をまとう。