チーム、家族とともに。今季初先発へ、日野12番・東郷太朗丸。
ジャパンラグビーリーグワン・ディビジョン2。日野レッドドルフィンズが苦しんでいる。
3月6日、ホーム(東京・武蔵野陸上競技場)に三重ホンダヒートを迎えた後半戦の第6節。終盤に1点差へ迫るも、19-20で敗れた。これで第1、2節と開幕連勝後は4連敗。勝点11で、同18の三重ホンダヒートに続き4位だ。ディビジョン1との入替戦出場は3位まで。負けられない戦いが続く。
今週の第7節はアウェーで釜石シーウェイブスRFC戦(岩手・釜石鵜住居復興スタジアム)。
この試合の先発メンバーでCTBに入り、12番を背負うのは今季初先発となる東郷太朗丸(たろま)だ。箕内拓郎ヘッドコーチは「スターター、リザーブ両方で考えている。冷静なプレーをしてくれる」と信頼を置く。6年目のシーズンとなるユーティリティバックは、チームと家族のために全うする。
6節の三重ホンダヒート戦。日野レッドドルフィンズで魅せたのは東郷だった。前半22分、リーグワンデビューしたFBブレンデン・ジャメンズ(高校豪州代表)が三重のタックルで左足を痛め交代。22番をつけた東郷がピッチへ立った。30分、自陣22メートルでSO北原璃久が蹴ったボールを追うと、10メートル線で左足で転がし自分で拾う。三重ディフェンス3人を振り切る。4人目のNO8ヴィリアミ・アフ・カイポウリに捕まるも、ゴール前5メートル線内側まで進んだ。トライになれば10-10の同点となる走りだった。
後半、12-20とされた日野が最後の追い上げをはかる。34分、敵陣22メートル右中間でのスクラム。日野はNO8からSHへ。切れのいいステップで走り込んだ東郷へボールが渡ると、そのままトライラインを越えた。東郷は難しい位置でのコンバージョンを自らの左足で成功し、1点差まで迫った。
試合後、自身のプレーをたんたんと振り返る。トライにも「反応しただけです」と自分を生かしてくれたチームメートへ感謝を告げる。
落ち着きあるプレーについて本人は「普段はラグビーのことを考えないようにしている」と言う。流通経済大時代には関東大学リーグ戦で得点王になったこともある。ラグビーのことを考えて生きてきた。それをラグビー以外のことを思うことで気分転換をしている。
首都圏の試合には二人で応援に出かける両親は振り返る。
「昔はラグビー、試合のことで一人で悶々としていたことがあった」
今は行動、言動に大人らしさが出てきたという。
その理由の一つ。昨年2月に結婚したことが大きいと両親は見ている。
「家で話す相手ができた。家族のためにという思いも出てきた」
日野市の地元で知り合った新妻は、試合会場へ駆けつける。「たろまは、スタンドにいる奥さんには手を振っている」と母親は“娘”に少しやっかむ。ラグビーを知らない友人を誘いラグビー熱の拡散を支える。
東郷は今季6試合全てリザーブで22番をつけてきた。初戦は後半24分から右WTB。2戦目は後半29分にSOで入ると、32分にゴールキック成功で初得点。初黒星となった第3節の三重戦は22番で出場無し(24-32で敗戦)。22-67と花園近鉄ライナーズに大敗した第4節は後半30分、インサイドCTBへ。2分後、チームのトライにつながるパスを放ると、ゴールも決めている。第5節は後半23分から2度目のSOに入っていた。
本人は「ポジションにこだわらない」という。チームファーストの姿勢。日野には社員として入社し、今も仕事とラグビーを両立させている。
2歳下の弟の由羽丸(ゆうま)さんは、兄と同じ流経大でCTBとしてプレーした。仕事で愛知県に住む弟は日ごろ、兄の試合を見ると家族へ厳しいメッセージを寄せる。父親は三重戦の後、「今日のメッセージは讃えていました」。
12日の第7節は、ホストの釜石にとっては地元で初開催となる。こちらも負けられない。
父親は敵地に乗り込む準備をしている。いつも試合会場で着ている日野のジャージーの背番号は「22」だ。釜石では「12」をつけた長男を「22」のおじさんが応援していたら、きっと東郷一家です。