国内 2022.02.25

横河武蔵野に深堀敏也新監督・髙島大地新HCが就任。春の初戦は4月24日、成蹊大戦

[ 山形美弥子 ]
横河武蔵野に深堀敏也新監督・髙島大地新HCが就任。春の初戦は4月24日、成蹊大戦
深堀新監督(右)と髙島新HC(左)は横河武蔵野の元選手。それぞれ現役時代にチーム存続の危機を経験した(撮影/山形美弥子)
新監督の深堀敏也氏(奥中央)は理論的で教え上手。2013年、山崎豪監督(現GM)のもとでアシスタントコーチを務め、トップリーグ入替戦まで勝ち進んだ実績が決め手となり監督に抜擢された。(撮影/山形美弥子)
新HCの髙島大地氏は感覚派。閃きでプレーするタイプ。「選手の意見も取り入れながら、チームを作りたい」(撮影/山形美弥子)
新シーズンにもっとも熾烈なポジション争いが予想されるのはバックロー。NO8山田皓也(手前)は野性味あふれるボールキャリーで存在感を示す(撮影/山形美弥子)
HO佐藤公彦はトップイースト界で最高レベルを誇るフロントローだ。崩光瑠、清水新也としのぎを削る(撮影/山形美弥子)



 横河武蔵野アトラスターズの春の初戦は4月24日。成蹊大けやきグラウンド(東京・武蔵野市)で成蹊大と対戦する。

 それに先駆け2月19日、深堀敏也新監督が選手に向けて新シーズンの方針を発表した。ミーティング後には髙島大地新ヘッドコーチ(以下、HC)の指揮のもと、U30選抜メンバーが初練習をおこなった。

 深堀監督は1976年生まれの46歳。長崎北旋風(1993年度)の立役者だ。現役時代はCTBとして活躍した。
 母校、進学校でもある長崎北は、部員たちの結束が固かった。文武両道を貫き、3年時の花園でノーシードから4強入りの殊勲を立てた。

 信条は一生懸命で、真面目、ひたむきなディフェンス。「アタックル」と謳われた攻撃的なタックルで相手を倒し、前に出る。平均体重76キロの軽量FWをBKが下支えして強豪校を次々と撃破した。
 筑波大に進み、主将を務めた4年時の大学選手権で8強入りを果たした。

 卒業後の1998年から9季に渡って横河武蔵野でプレーした。
 現役引退後はヘッドコーチ、監督代理、アドバイザーを歴任した。まだクラブチームではなく企業チームの時代だった。
 活動は景気によって左右された。チームの断裂、人員縮小、再編成を余儀なくされ、入社したての新人選手が切り捨てられそうになったこともある。阿多和弘氏、山崎豪氏、松村表氏、佐藤明善氏らとともにチーム存続の危機を乗り越えた。

 監督就任にあたり、選手一人一人と面談をした。チームの歴史、特に水面下での闘いを知らない今の選手たちが、どんな気持ちで横河武蔵野に籍を置いているのか、知りたかった。

「選手たちが話してくれたのは、雇ってもらえて会社にも、プレーさせてくれているチームにも感謝しているということ。『この環境に感謝している。だからちゃんと仕事をしながら、このまま高いレベルのラグビーをやりたい』と言うんですよ。
 選手にこんな思いがあるのであれば、持っている力を一つにして成功に導くのは、自分の責務だと再認識しました」

 そのためには、手段ではなく目的を明確にして選手たちに示すことが、一番重要で責任の重い仕事だと話す。
「横河武蔵野でラグビーをやる目的、この練習、このトレーニングをなぜやらなければならないのか、目的に対してちゃんとみんながアプローチすれば、いろんな遠回りはあるだろうけど、一つのところに辿り着くでしょう。そう思います」と結んだ。

 髙島HCは1988年生まれの33歳。体つきは決して大きくはない。努力と鍛錬でサイズを凌駕し、黒黄の10番を背負った不屈の人だ。
 北中野中でラグビーを始め、3年時に主将を務めた。慶應高、慶大へ進み、激烈な実力主義に揉まれ、技術とスピードに磨きをかけた。

 学生最後の12月、ついに公式戦に初先発した。
 持ち前のラグビーセンスと切れの良さを生かし、死角のないゲームメイクと仲間の良い動きを引き出すプレーメイクで、大学選手権の近畿大戦では43-7の大勝に導いた。

 卒業後の2011年から横河武蔵野のハーフバックス(SO/SH)として8季に渡ってプレーした。現役引退後はBKコーチとしてずっとチームに携わってきた。
 2か月前、山崎豪GMから打診を受け、いよいよ今年、覚悟を持って新HCに就任した。
「シーズンが終わったときに、チーム全員が『本当にやり切った』って達成感を持てるチームにしたいです」と、噛み締めるような口調で切り出す。

「マインドのところは大切にしてほしいな、と思っています。これまで自分が選手としてやってきたときに、一生懸命、一生懸命プレーするっていうのは、ずっとやってきたところです。プレーに関しては感覚でやっていたので、言語化するところに苦労はあります」

 上から目線で高いところから命令を下すような指導は、自分自身も苦手だという。
「なるべく選手に近い存在でありたい。一番意識しようとしている部分です。僕が思っているものをやりなさいって言うよりは、プレーする選手たちが思っているものを耳に入れて、一緒に良いものを作り上げていきたい」
 若き新HCらしい柔軟さを見せる。

 理想はメリハリのあるチーム。
 選手同士の仲が良すぎて、その「仲良し」がグラウンドでも出てしまっていると感じている。
 スタッフの中で一番選手と年齢が近い自分が、そこをうまく導いて競争意識を引き出そうと思う。

「勝負事に、負けていいなんてありません。負けていい試合なんてないんですよ。そういう気持ちで僕は準備をしますし、選手にもその熱を感じてほしい」

 任期は特に定められていない。会社にも貢献して、ラグビー部に恩返しするのだと腹を決めている。
「もう要らないよって言われたら、分かりましたって言いますし、まだやってくれって言われれば、違う形でも、HCっていう肩書じゃなくても、サポートできるのであれば、できるだけ長く恩返ししたい。そういう気持ちがあります」

 横河武蔵野には現役引退後も活躍できる場所がある。企業の力に頼ることなく、選手OBが自らの手で環境を作り、選手を支える。
 自分と同じ熱を持って集まった有志たちが、チーム作りに気炎を上げている。

※試合日程は横河武蔵野アトラスターズ公式ホームページでご確認ください(2022年2月15日リニューアル)。

フルスロットルで初練習に臨んだWTB佐藤拓磨。バックスリーのポジション争いにも、さらに激化が予想される(撮影/山形美弥子)
若き新HCの背中を守る、阿多弘英アナリストチーフ(中央)と松村表BKコーチ(右)。(撮影/山形美弥子)

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