国内 2022.02.11

指揮官は激しさと賢さ兼備。初勝利目指すスカイアクティブズは「ゲームライク」に鍛える。

[ 向 風見也 ]
指揮官は激しさと賢さ兼備。初勝利目指すスカイアクティブズは「ゲームライク」に鍛える。
三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で奮闘するマツダスカイアクティブズ広島の西野嘉修(撮影:松本かおり)


 ラグビーのチームは、選手を揃えるだけでは成立しえない。国内リーグワンでそれを証明するのが、マツダスカイアクティブズ広島である。

 3つあるグループのうち、中位層にあたるディビジョン2に加盟。6チーム中4チームが昨季まであった国内トップリーグへの参戦歴を持つなか、スカイアクティブズは下部のトップチャレンジリーグで上位をうかがってきていた。

 海外出身者の人数、プロではない日本人選手が社業に割く時間においては、元トップリーグ勢がリードしている。しかし、LOの西野嘉修はあきらめない。

「ひとりひとりが意識を高め、どれだけゲームライクに練習ができるかを考えてやっていきたいです」

 CTBで共同主将の亀井康平もうなずく。

「周りのチームにスター選手が多いなか、チーム全体でハードワークする。フィールドに立つ選手の数で、相手に勝る…。そうして、相手の外国人選手に対応したい。チーム力で上回りたいです」

 1月22日、敵地の相模原ギオンスタジアム。前年度までトップリーグにいた三菱重工相模原ダイナボアーズとの第2節に挑む。最後は25-52と敗れたが、体格差に左右されない領域で見せ場を作った。低い姿勢のスクラム、タックルの出足、動き出しやポジショニングの速さを印象付けた。

 チームを率いる中居智昭ヘッドコーチは、選手たちの述べた自軍の立ち位置についてこう補足した。

「メンバー(表)を見ると分が悪いと思われるかもしれませんが、我々は若いチームです。どれだけ成長できるか、練習からチャレンジしています。(この日は)ゲームでしか見えない修正点が何点か見えてきました。その修正点を普段の練習に入れ込み、メンバー外選手も含めておこなっていきたいと考えています」

 表面的な個体差に動じない。その思想を、指揮官は現役時代から保っている。

 熊本工高を卒業した2000年にマツダ(当時名称)へ入り、若手時代に大物との「伝説」を作る。九州社会人リーグのサニックス(現:宗像サニックスブルース)戦で、相手方にいたジェイミー・ジョセフと殴り合いをしたのだ。

 後に日本代表のヘッドコーチとなるジョセフは、当時のルールでニュージーランドと日本の両方で代表に選出。対戦時はすでに大物だった。

 もっとも中居は、「ゲーム中は、すごい人だとは見ない。知らなかったから、ということもありますが」。FW同士が組み合うモールで「小競り合い」を起こし、2人揃ってシンビン(10分間の一時退場)を命じられたのだと笑う。

「まぁ、僕が(先に)いらんことをしたんですけど」

 ちなみにその試合には、当時の日本代表監督である向井昭吾氏が視察していた。ここで激しさが買われた中居は、2002年に日本代表予備軍の「ジャパンA」に抜擢される。2003年には強豪の東芝に移籍し、日本代表としてもプレーした。

 東芝ではプレーの分析力も評価され、2013年度までに副将や兼任コーチを担った。引退した2014年には、同部のFWコーチに就任。おもに相手のモールの進路を塞ぐ、もしくはモールそのものを作らせない技術と身体の使い方を子細にわたって指導してきた。もちろん自軍が組んで押すための理論も有し、「FWの東芝」という文化を紡いだ。

 2017年になると現所属先で現役復帰を果たし、リーグワン元年となる今季は指導陣の中枢を担う。部内マッチによりスクラムの強いメンバーをレギュラーに抜擢したり、入部間もない若手を軸に据えたりと、独自路線を貫く。

 ここまで0勝3敗。13日には東京・秩父宮ラグビー場で、こちらも未勝利の釜石シーウェイブスと今季初白星を争う。

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