赤いヘッドキャップに注目。ギャバン・ヴィリエール[フランス代表WTB]の素顔
「僕はトップ14でナンバーワンのWTBじゃないし、華麗なステップを披露できるわけでもない。でも闘志と仕事量では劣らない」とシックスネーションズ開幕前に言っていたフランス代表のギャバン・ヴィリエールが、イタリア戦で3つのトライを決めてこの試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
特に前半終盤の彼の1本目のトライは、イタリアの激しさに押されて試合に入りきれていなかったフランスチームの起爆剤になった。
フランス代表のラファエル・イバネスGMは「素晴らしいパフォーマンス。戦士のマインドセットでチームメイトに道を示した」と試合後の会見でヴィリエールを讃えた。
2020年11月のイタリア戦で代表デビュー。このデビュー戦で代表初トライをあげた。
元フランス代表WTBのクリストフ・ドミニシが急逝した直後だったこともあり、小柄だがアグレッシブに大きな相手に果敢に挑むスタイルがレジェンドのドミニシに例えられる。
「とても光栄なこと。彼は小さくても強いメンタルでフランスラグビーに偉大な功績を残した。彼を見て『こんな選手になりたい』と思った。小さくても、そしてエリートコースを歩んで来なくても、この巨人の世界で活躍できることを見せたい」と言うヴィリエールは、中学校を卒業した時にプロクラブのジュニアチームのトライアルを10ほど受けたが、結果はトップ14だけでなく2部リーグ、そして3部リーグのクラブも『不合格』だった。
「おかげで心が強くなった」と言う。
地元のアマチュアクラブでラグビーを続けていたところ、3部リーグのルーアンから声がかかった。ルーアンは、元イングランド代表SHのリチャード・ヒルを監督に迎え、強化に取り組み始めたところだった。
身体が小さかったヴィリエールは当時SHだった。シニアチームに入っても監督のヒルと毎日200本パスの練習を続けていたがうまくいかなかった。CTBをすることになった。
そしてある日、先発で出ていた試合で残り15分という時に「WTBに回れ」と言われた。2トライした。それ以来トライを量産し続けポジションは動かない。
しかし人生が急速に動き始めた。7人制フランス代表に選ばれ、何年か前に不合格だったトゥーロンに入団した。
そして今では右WTBのダミアン・プノーと同じぐらい、左にはヴィリエールが代表チームで定着した。
「タッチラインで待っているだけというのは、僕の性分に合わない。チームのプラスになることを常に探している」と、闘志剥き出しでラックに飛び込みジャッカルし、キックを追いかけ、タックルに行く。
「もちろんWTBの第一の役割はトライをとってチーム全体の仕事を仕上げること」とフィニッシャーとしての役割も忘れない。
「肉弾戦が大好き」と言う。「グラウンドでは『やるか、やられるか』。個々がまず1対1の対決で、フィジカルでもメンタルでも勝たなければいけない。試合だけではなく練習でもこの気持ちでいる」
子どもの頃、空手やボクシングで培った闘魂が彼を奮い立たせる。
「どこからそのエネルギーが湧いてくるのか?」と問われると、「ラグビーが好きだから。ラグビーできることが嬉しいから。身体的、精神的にきつくても、『今日は緩めに行こう』なんて決して思えない。僕にとってラグビーは100パーセントで生きるものだから」と答えた。
次節のアイルランド戦でも、忙しく動き回る赤いヘッドキャップに注目してほしい。