ワクチンパス導入のフランス。ラグビー界が感じる追い風とモヤモヤ
フランスのジャン・カステックス首相は1月20日、現在実施されている新型コロナウイルス対策の規制が2月から緩和されることを発表した。
フランスではこの数日、1日の新規感染者数が40万を超えている。
しかしデルタ株の感染者が減少してきたこと、他地域より先にオミクロン株感染者が急増したパリとその周辺地域での感染者数が減少し始めたこと、また集中治療室でコロナ患者が減少に転じ始めたことなどから、事態の好転の兆しが見え始めてきたという。
この規制緩和により、1月3日から5000人に制限されているスタジアムの観客制限(屋内は2000人)が、マスクの着用を義務とした上で2月2日に解除される。
2月6日に開幕するシックスネーションズの準備をしていたフランス代表チームにとっても、今年こそはチケット収入を期待しているフランス協会にとっても朗報である。
また同首相は、これらの規制緩和は1月24日に『ワクチンパス(ワクチン接種証明)』が導入されることで可能になると説明した。
レストランや映画館などの公共施設や、飛行機や長距離電車等の利用時に『ワクチンパス』の提示が義務付けられるようになる。
もちろんスタジアムも対象となり、プロ、アマチュアに関わらず、16歳以上のすべてのアスリートは、スタジアムや体育館などの公共のスポーツ施設でトレーニングや試合に参加するには、ワクチンパスを提示しなければならない。
「海外から来る選手もフランスでの大会に参加するには、ワクチン接種を完了していなければならない。何人たりとも免除されることはない。ワクチン未接種の選手はフランスで開催される大会に参加することはできない」と現地ラジオ番組でロクサナ・マラシネアヌ スポーツ担当大臣は明言した。
つまり、シックスネーションズの試合でスタッド・ド・フランスに試合に来るイタリア、アイルランド、イングランドの選手はワクチン接種を終えていなければならないのだ。
また、トップ14の主催団体であるLNRによると、トップ14と2部リーグのProD2に登録されている98㌫の選手・スタッフがワクチン接種済みということだ。
しかし、残りの2㌫に当たる26人の今後が気になるところだ。
スタッド・フランセでプレーしているフィジー代表のワイセア・ナヤザレヴもその1人だ。
「これは僕の選択だ。ワクチンを接種しても感染するし、感染させる可能性はあるじゃないか。でも法律が変わって、フランス政府がワクチンパスを導入すれば、僕も接種しなければならなくなる。ワクチンはフランスでラグビーを続けるための最後のオプションだ」
同選手は1月初めのインタビューでそう言っていた。
しかし、スタッド・フランセのトマ・ロンバールGMの最近のインタビューによると、「ワイセアと話し合った。彼は数週間前にウィルスに感染したから、今は抗体が認められる期間だが、この期間が終わる頃には彼も接種することになった」という。
フランス政府はワクチンを感染拡大抑止政策の柱としている。
「ワクチン接種をしない自由を訴えることは、他人の自由を奪い、他人を危険に晒すことだ」とマクロン大統領は発言している。
規制を無くして国民が普通の生活ができる社会を取り戻すため、また逼迫し疲弊する医療現場への想いもあるだろう。
しかし、追い詰められて半ば強制的に接種に踏み切らせるというのも違和感を覚える。
国や言葉、人種、文化、思想の違いを超えて楕円球の周りにさまざまな人が集うスポーツ。それがラクビーだったはずだが。
今後の感染状況により、ワクチンパスの規制も解除される事になるとカステックス首相は反対派をなだめるように言っていた。
その日が早く来てほしいものだ。