マルコム・マークス、入国制限→スピアーズ合流即メンバー入りへの道のり。
いわば真打登場か。
名称をクボタスピアーズ船橋・東京ベイと変えたばかりの人気クラブへ、マルコム・マークスが帰ってきた。
「オレンジアーミー」こと、チームカラーである橙色の衣装を着たファンへメッセージを届ける。
「ここまで長い道のりでした。プレーできることが、何よりも楽しみです。現状、スピアーズはいい雰囲気です。スタジアムで、オレンジアーミーの前で戦えることを楽しみにしています」
これまで南アフリカ代表として46キャップ(代表戦出場数)を得てきた27歳は、身長189センチ、体重117キロのサイズで最前列中央のHOに入る。スクラムでのプッシュ、突進、ジャッカルで持ち前のパワーを活かす。巨躯にあってはスピード感もある。
昨季クボタ入り。常に持ち味を発揮する。昨年5月までのトップリーグ最終年度ではクラブ史上初の4強入りと自身のベストフィフティーン受賞を果たし、今年1月からのジャパンラグビーリーグワンでも活躍が見込まれた。もともとは昨年11月末までの代表活動後、自身の結婚式に伴う休暇を経てチームに合流する予定だった。
休みを終えたマークスは、アフリカ東海岸・インド洋上のザンジバルでのスイミング、シュノーケルで心肺機能を高めていた。しかしその後は、日程の書き換えを強いられる。マークスの母国で新型コロナウイルスのオミクロン株が発見されると、日本への入国制限が強化されたのだ。
来日できたのは1月。その後もしばらくは、空港近くのホテル、自宅での自主隔離を余儀なくされた。
「ラグビーはチーム競技で、お互いに切磋琢磨し合ってするものです。正直に言って、ひとりでモチベーションを保つのは難しかった。それでも、できる限りのことをしていきました」
マークスと同じ南アフリカ出身で、かねてより滞日中だったフラン・ルディケ ヘッドコーチは、新年1月7日に予定されていた開幕戦にマークスが出られないことを旧年中に明言する。果たして初戦は、対戦相手にクラスターが発生したため不戦勝とする。15日の第2節はマークス不在で臨む。
雌伏期間のマークスは、ルディケ、前川泰慶チームマネージャーと交流した。当時の様子を、「いつでも戻れるよう、コンスタントに連絡を取っていました」と後述する。
クラブへ戻り次第、すぐに試合のメンバー入りへアピールするつもりだったのだろうか。1月20日、練習前のオンライン取材でそう問われ、簡潔に言った。
「それが理想ではありました。いいブレイクをもらえたうえ、そこから試合に出られるようにしていたところでしたので」
チームは第2節で白星スタートを飾る。22日には、ノエビアスタジアム神戸でコベルコ神戸スティーラーズに挑む。スピアーズにとっては昨季のトップリーグプレーオフで下した相手であるうえ、今季も開幕2連敗中と苦しんでいる。ただし司令塔のSOには、ニュージーランド代表50キャップのアーロン・クルーデンを据える。戦力は豪華だ。
この試合のメンバーは件の会見後すぐに発表され、マークスは控えの16番に入った。重要な局面で投入されるか。
「いまもまだ身体をフィットさせるための働きを必要としています。いいパフォーマンスができる状況に持っていけるよう、頑張りたいです。ただ、現状でできる範囲の準備は、できています」
当日、出番のタイミングを探るルディケはこう言い添える。
「昨季いいシーズンを送れたのは彼のおかげでもあります。彼はこちらに戻って来る前にがまんを強いられましたが、いまは元気。どれだけ貢献してくれるか、期待しています」
当日は、今季初お披露目となる青のセカンドジャージィでプレーする。ソックスは通常の青と異なる赤。海底火山の噴火が起きた、トンガ王国への支援の意を込めた。
岩爪航広報によれば、17日にコーチ間から「何かできないか」と議題が立ち上がり、やがてリーダー格の選手らからいくつかのアイデアが浮かんだ。18日までに今度の取り組みの実施が決まり、まもなくスティーラーズ側、リーグ側がそれを了承した。
スピアーズの今度の登録メンバーにあっては、3番のオペティ・ヘル、6番のトゥパ フィナウ、13番のテアウパ シオネがトンガ出身だ。