南ア代表PRニャカネ、経験を買われフランスのラシン92へ。「子どもみたいに緊張している」
南アフリカ代表のプロップ、トレヴァー・ニャカネがフランスのラシン92に合流した。
昨年11月に、南ア代表チームはオータム・ネーションズシリーズの準備合宿をパリ近郊でおこなっていた。タイミングよく、その週にラシン92と、同じ南ア代表のハンドレ・ポラードとコーバス・ライナーが所属するモンペリエの試合が、ラシン92のホームスタジアムであるパリ・ラ・デファンス・アリーナでおこなわれ、チームで観戦に行った。
「すごいスタジアム! ここでプレーしたい! 海外でプレーするならこんなクラブでプレーしたい! こんなスタジアムで、こんな雰囲気の中で!」とチームメイトのボンギ・ムボナンビに言ったという。試合後、ピッチサイドには、その日大活躍だったライナーと興奮気味に話していたニャカネの姿があった。
数週間後、ラシン92からオファーを受けた。
「スーパーラグビー、そしてカリーカップは2年続けて優勝し、北半球のラグビーに挑戦したいと思っていた。選手として、また人間として成長するために、精神的にも身体的にも新たにチャレンジする環境に身を置きたかった。そして家族にも新しい世界を見るチャンスを与えたかった」と、32歳で新たな挑戦を決めた理由を明かす。
トップ14について、ラ・ロシェルでプレーしているレイモン・ルールとディリン・レイズからも話を聞いたが、最も相談したのは、2004年から2012年までトゥールーズでプレーし、現在は南ア代表スクラムコーチのダーン・ヒューマンだ。「スーパーラグビーよりフィジカルで激しいと言われた。難しいと言われれば言われるほど、挑戦したくなる性分なんだ」と笑いながら話す。
もともとは左プロップだったが、2015年ワールドカップ前の合宿から右プロップの練習を始めた。最初は苦労したが、2018年にヒューマンがブルズのスクラムを見ることになり、「僕のスクラムの組み方を完全に変えた。彼のおかげで、『そこそこの右プロップ』から『相手を支配する右プロップ』になれた」と恩師に感謝する。
「子どもの頃はラグビーなんて手の届かないものだった。夢見ることすらできなかった。白人のものだったから。母親がラグビーをできるようにしてくれた。練習場所が遠くて車で通わなければならなかったけど、ガソリンを買うお金がない時は歩いて行ったこともある」と子ども時代を振り返る。
南アフリカからフランスへ到着後、新型コロナウイルス感染症予防のため、10日間の隔離を余儀なくされた。「家族は長く感じていたけど、僕はホテル暮らしには慣れている。昨年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦の期間は17週間続いたからね、10日ぐらいどうってことない」
「まず数字、そしてコンビネーションやラインアウトを覚えなくちゃ。2週間でプレーできる状態に持っていきたい。フランス語はわからないけど、それも含めて楽しみたい。子どもみたいに緊張している。でも、緊張感が全く無くなったら、その時はもう辞めなきゃね」と屈託のない笑顔で語る。
ラシン92は今季前半戦、スクラムに苦しんできた。プロチームに在籍している7人のプロップのうち、5人が22〜23歳だ。昨季は若いフロントローでも他チームと互角に戦えていたが、「ラ・ロシェルとの準決勝で何かが壊れた。強いスクラムなしに優勝することはできない」と言うのは、ラシン92のジャッキー・ロレンゼッティ会長だ。
トップ14で現在8位のラシン92。後半戦で順位を上げていくためにも、プロップが自信を取り戻すことが急務。若いフロントローをリードし、さらにはチーム全体の士気を鼓舞してくれることがニャカネに期待されている。
New kid
— Racing 92 (@racing92) January 11, 2022
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