元契約選手の薬物所持逮捕でグリーンロケッツ東葛が会見 リーグワンは参戦へ
梶原健代表、瀧澤直主将をはじめ、会見に出席したNECグリーンロケッツ東葛の5人は憔悴し切った表情だった。
今季から加入したブレイク・ファーガソン(1月2日に契約解除)が違法薬物所持で逮捕されてから5日。同チームが1月7日に開幕するジャパンラグビー リーグワンでの試合開催、リーグ戦参加を実施することを決めた。
1月4日夕方に会見を開き、その判断に至った経緯と状況を説明した。
会見の前、チームはリーグに参戦する理由についてのプレスリリースを、次のように出した。
□外部機関による薬物検査を実施し、全員の検査結果が陰性であることを確認できた(事件現場にもチーム関係者はおらず、この結果も含め、個人での犯行と判断)。
□外部の弁護士同席のもと、全選手に対してコンプライアンス遵守の説明を実施した上で、個別ヒアリングと誓約書の取得をおこなった。
□今後、全選手への定期的な薬物検査およびコンプライアンス研修の実施、新規選手契約時の薬物検査を含む身辺調査の徹底をおこなう。
さらに、事実関係の徹底分析に基づく最終的な再発防止策の提言に向けて調査委員会を設置し、1か月をメドに対策をまとめ、公表する予定だ。
管理責任を明確にするため、適切な対策を実施後、スポーツビジネス推進担当役員およびチーム幹部の処分をおこなう。
会見では、1月3日にスタッフも含めたチーム関係者全74人が薬物検査を受けて全員が陰性だったことなど、詳細が伝えられた。
冒頭に「チームではコンプライアンスの遵守徹底をしてきたつもりだったが、多くの新規選手の獲得についてそれを徹底できず、教育もできていませんでした」と梶原代表が謝罪。
社会的責任を果たすためにも、ホストゲームの収益の一部をリーグにおける違法薬物の根絶対策などのために寄付する考えを示した。
チームがリーグ戦に参加することに関しては、初戦の辞退、シーズンの辞退、廃部も含めてあらゆることを想定して話し合い、選手たちがラグビー競技を通して社会的責任を果たすことが大事と判断したと説明。
真摯な取り組みを示していく決意を口にした。
ファーガソンとの契約に関しては、十分に身辺調査をした上で契約したつもりだった。
以前に(オーストラリアで)暴行事件を起こしていたことも把握している(2013年)。
しかし不起訴となったこと、子どもを授かり、代理人を通して「大人になった」という変化も確認。ディレクター・オブ・ラグビーに就くマイケル・チェイカ氏との面談もおこなった上で契約に踏み切ったという。
ただ、代理人は海外にいるのみで日本国内にはおらず、ヒアリングのみに終始したことにも問題があったかもしれないと話した。入国時の薬物検査も実施することもなかった。
コロナ禍もあり、家族を置いての来日。同選手はトレーニングには精力的に参加していたが、オフフィールドではメンタルの不調を訴えていたことも把握していた。
チームのファーガソンとの契約は9月末。10月27日に来日し、隔離期間を経てチームに合流した。
事件当日はひとりで六本木へ。そこで事件が起こった。
チームは翌31日に選手たちに事実を伝えた。1月1日、2日と練習は中止。同3日に薬物検査を実施した。
選手たちは、チーム上層部が判断した試合実施の決定を4日に聞いた。
瀧澤主将は、「今週末の試合を目指してハードなトレーニングを積んできたのは事実で、プレーしたい気持ちはあったが、手放しで喜んでいいのか複雑だった」と苦しい胸のうちを吐露した。
同主将の知るファーガソンは経験値が高く、グラウンドの上でも外でもエナジーがあふれていたという。
それだけに「事件のことを知ったときは信じられませんでした。ショックで言葉も出なかった。リーグワン参戦のことなど不安が込み上げてきました」と言った。
「一人ひとり、心の中でいろんなことを考えている。それがあらためて分かり、(主将として)自戒しています。チームとしても今回のことを戒めとして、しっかり行動していきたいと思います」
選手だけのミーティングも複数回おこなった。「お騒がせしたことにお詫びを申し上げます。真摯に受け止め、プレーを通して少しでも信頼を取り戻していきたい」と声を絞り出した。
チームは開幕戦の場で、あらためてファンへ謝罪することにしている。
グリーンロケッツの会見後には、リーグワンと日本協会も会見を開き、謝罪とともに、今後の対応策について話した。
明日からリーグワン所属の全チーム全選手への薬物検査を実施し、今後も不定期の同検査を高頻度で実施することなどを発表した。
直近の検査で陽性者が出た場合の試合開催の判断については、「結果に基づいて必要な見直しをする」と答えた。
ただ試合前48時間を切ってからの中止はオペレーション的に難しいため、複数の陽性者が出た場合は再考のケースもあるが、基本的には当該選手(陽性者)を出場停止とした上で試合を実施し、後日あらためて対処法が考えられる。