国内 2022.01.01

元ジャパンと押し合い15年ぶり全国4強。京産大の平野叶翔主将は国立で笑いたい。

[ 向 風見也 ]
元ジャパンと押し合い15年ぶり全国4強。京産大の平野叶翔主将は国立で笑いたい。
第58回全国大学選手権の準決勝に臨む京産大の主将、平野叶翔。12月31日の練習時(撮影:松本かおり)


 笑顔のスナイパーでありスクラメイジャーは、大晦日の練習を終えると笑顔になった。

 平野叶翔。京産大ラグビー部の主将である。クラブは15季ぶりの全国4強入りを果たし、雪に降られながら2日後の決戦へ調整する。

 新年2日に大学選手権準決勝を控える。東京・国立競技場で、帝京大とぶつかる。

「試合に向けて準備できる。幸せです。その瞬間、瞬間を楽しんで、皆でラグビーをしている感じです」

 問答の合間に顔をほころばせる。試合中のレフリーと対話をする際や、仲間内での円陣においても同様だ。常に朗らかな印象を与えるが、いざ試合が動けば鋭さを示す。

 際立つのは、接点の球へ絡むジャッカル。勝負どころで攻守逆転を決めたり、反則を奪ったり。

 23シーズンぶりに制した関西大学Aリーグでそんなシーンを多く作り、26日、日大を27-26と下した選手権準々決勝でも24-26と2点差を追う後半24分以降に2度、その一手でペナルティキックをもぎ取っている。

 ボール保持者と援護役の隙間を、見逃さない。

「ジャッカルができるか、できないかの判断はプレーしながら常にしています。ゲームの流れ、球の出てくるスピードから、その判断を瞬時にできるようになってきている。チャンスどころ、重要なところで(ジャッカルが)できていることで、チームを優位な状況に進められているのかなと思います」

 特筆すべきは、地上戦で光るこの人の位置が右PRであることだ。右PRはスクラムの1列目にあって、ひときわ負荷がかかる。味方と相手の重さに耐えながら、攻防が動いてからも見せ場を作るのだ。

 セットプレーを重視する京産大は、右PRをエリートポジションと見立てる。

 OBの田倉政憲FWコーチのもと、「アンダーオーバー」という他チームではあまり見られない形のスクラムを採用。最前列中央のHOの腕が、右PRの腕の下を通る。右PRが前にせり出す形となり、「そこが強み。逆に、そこを狙われたら(右PRが押し負けたら)どうしようもなくなる。しっかり意識してやりたい」と平野は言う。

「OBの(右PRの)皆さんもその重圧とプレッシャーに耐えてやってきたからこそ、いまの文化がある。しっかり継承していきたいです」

 ちなみに平野の1年時は、田倉コーチが実際にスクラムを組んで指導することもあったという。

 1989年のスコットランド代表戦勝利も経験した元日本代表戦士は、現在55歳。それでも平野は、当時で50代に突入していた田倉が「ムチャクチャ、強かったです」と証言する。皮膚感覚はこうだ。

「自分の身体がどう動いているか、わかっていらっしゃるんじゃないかと思います。(頭で)思っている動きと実際の動きのギャップが少ない方なのかなと」

 稀代のスクラメイジャーとの猛練習で、関西随一のパックを形成してきた。対する帝京大も重量感を活かしてスクラムを押し込むが、平野はこうだ。

「どっちが強いかを決めに行こう、という感じでいます。低く組むというところを、1年間を通して意識しました。帝京大さんよりも低く組めれば、より有利な状況に持ち込める」

 相手右PRの細木康太郎主将はベンチスタートの予定で、京産大の左PRに入る野村三四郎は「前半にしっかりスクラムを押して、(細木が)出てこざるを得ないようにしたいです」。防御で、スクラムで、先手を取りたい。

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