後藤洸輝は大分発・2021年のファストマン。「専門的」な知識を吸収。
地元は大分県西部の緑濃い町。中学時代はひたすらトラックを駆けていた。
「そのおかげで、ファストマンになったと思います」
玖珠美山高校ラグビー部1年の後藤洸輝は、12月17日からの3日間、日本ラグビー協会(日本協会)による通称「ビッグマン&ファストマン キャンプ(BFキャンプ)」に参加していた。正式には「第6回TIDユースキャンプ」。大阪で約2年ぶりの実地開催が叶っていた。
小学1年から本格的に玖珠ラグビースクールへ通い始めた後藤は、中学時代は学内の野球部、さらに地域の社会体育で陸上競技をしていた。当時は短距離走用のスパイクを履けば50メートルを「6秒、切るくらい」で走れた。サイズや身体能力のある選手が集まる「BFキャンプ」にはうってつけだった。
BKコーチを務めたのは中園真司氏。選手時代は小柄でもキレのあるWTBとして関東学院大、ヤマハ、日野などで活躍した同氏は、1対1の抜き合い、複数名同士での攻防セッションを通して「自分の(仕掛ける)間合いを知ること」の大切さを訴える。
さらに最終日の19日には、里大輔氏が指導した。明大などでも指導するスピード強化の専門家は、「ビッグマン」と「ファストマン」のそれぞれに加速力を高める身体の使い方を伝授した。
過去にオンラインでの「BFキャンプ」でも里の指導を受けてきた後藤は、グラウンドを引き上げる際に里へ質問を投げかける。与えられた機会を活かしたかった。
いわば「一芸」で40名の高校1、2年生が選ばれたこの取り組みは、2018年から始まっている。企画者の野澤武史・日本協会リソースコーチも、「夢がある」と自負する。
後藤は、過去に参加してきた九州地区の選抜合宿との違いをこう捉えていた。
「足が速い人だけ、大きな人たちだけという集まりで、『速い人はこういう身体の使い方ができるんだ』という専門的なことを吸収できました。僕はスピードの活かし方を3日間かけて教えてもらえた」
今度の集まりに、12月27日からの全国高校ラグビー大会への参加選手はいない。全国的な強豪校の控え選手もセレクションの対象になりそうだったが、今回は全国大会がウイルスに影響されないよう万全の注意を払ったと野澤は話す。
後藤も今秋の大分県大会では初戦で敗れていて、現在の自軍の部員数は「13~14名」とする。新人戦では10人制の部に出るという。
ラグビースクール時代の実力ある同級生は九州の強豪校へ散るなか、本人は「小学校の頃から一緒の仲間たちと(プレーしたい)」からと玖珠町に残った。
身長173センチ、体重70キロと小柄もFB、WTB、SO、SHと複数の位置をこなせるうえ、相手が捕まえづらそうなフォームでステップを踏める。直近のターゲットは、ここ数年の県予選決勝に出ている大分舞鶴、大分東明を倒して全国大会に行くことだと話す。
キャンプの総括を聞かれれば、「チームの課題(解決)につなげられることがあった」と応じる。
「レスト(休憩)の時に皆で集まって、練習のことについて発言していた。僕のチームでは話す人が何人かしかいないのですが、こういう場所では皆が切磋琢磨しているのだと感じました」
日本協会が認める強化メソッドや世代有数の選手たちのマインドセットが全国の隅々まで共有されうる。これも「BFキャンプ」の魅力のひとつだ。