【コラム】昨日より今日、と信じて
リーグワン1部のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪は、天理高OBのSO王子拓也の提案で活動を始めた。11月27日の日野レッドドルフィンズとの試合をチャリティーマッチにして募金を呼びかけ、グッズを販売した。会場には約1500人の観客が訪れ、グッズはハーフタイムで完売したという。広報の菊地新さんは「僕らができることは限られているけれど、個人が集団になればそれ以上の大きなパワーを出せる」という。
12月11日の花園近鉄ライナーズとクボタスピアーズ船橋・東京ベイの一戦でも同様の取り組みは行われた。
豪志さんを思うのは、OBやトップチームだけではない。
2007年に練習試合で頸椎を損傷した杉田秀之さん(当時 慶大1年)は、豪志さんのニュースを見て何か出来ることはないか、と考えていた。
杉田さん自身、けがをした当初は気持ちがすさんだ時期もあったという。それでも、ラグビー部の同期の手紙や仲間からの寄せ書きを病室中に貼って、リハビリへの意欲を奮い立たせた。
「1か月、なにも進まないこともあった。でも周りと比較しても苦しくなるだけ。昨日より今日、日常生活でできることが少しずつ増えていくことを喜びにした」
杖をついて歩けるようになった杉田さんは現在、33才。外資系企業に勤めつつ、NPO法人「日本せきずい基金」の理事も務める。
「コロナが落ち着いたら豪志さんに会いに行きたい」。自分も同じような人たちの体験談を聞いて、励みになった記憶があるからだ。
豪志さんがけがをしてから初めて外出したのは、11月21日の奈良県予選決勝だった。天理高校はライバルの御所実高に敗れ、豪志さんを花園に連れて行くことはできなかった。
でも、豪志さんたちの高校ラグビーは終わっていない。次の目標は来年1月の3年生の送別試合。優二さんも松隈監督も、豪志さんがみんなと笑顔で会える日を心待ちにしている。
◇
天理高校ラグビー部は、「木村豪志君を応援し、支える会」として「54会」を立ち上げた。支援金などの詳細は http://tenri-rugby-highschool.com/gosi/から。