日本代表 2021.11.24

日本代表の藤井ディレクターは選手層に危機感 「リーグワン以外でも経験させてやる場が必要」

[ 編集部 ]
日本代表の藤井ディレクターは選手層に危機感 「リーグワン以外でも経験させてやる場が必要」
2023年のラグビーワールドカップを見据える日本代表 ©JRFU


 ヨーロッパ遠征を終え帰国した15人制男子日本代表の藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが、11月24日に総括メディアブリーフィングをおこなった。

 今回のヨーロッパ遠征では、格下とされるポルトガル代表には勝ったものの、世界ランキングが上位のアイルランド代表とスコットランド代表には敗れ、1勝2敗という成績だった。ヨーロッパへ向かう前に大分県でおこなわれたオーストラリア代表戦では、当時世界ランク3位の強豪相手に23-32と健闘したが、2週間後におこなわれたツアー最初のアイルランド代表戦には5-60と大敗した。
 藤井ディレクターはアイルランド戦について、「オーストラリア戦でみんなよくない自信をつけたと思う。『いけるんじゃないか』という。それは、ラグビーにおいては絶対に頭のなかに入れてはダメなことだが、なんとなくそういう雰囲気があったと、あとから考えればそう思う」と振り返った。

 コロナ禍で、渡航・入国後の隔離の影響もあったとみる。
「他チームもそうだが、隔離による選手の疲弊があったと思う。オールブラックス(ニュージーランド代表)やワラビーズ(オーストラリア代表)なども直接コーチ陣と話をしたところ、それを今後どうするかというのはどのチームも課題だったようで、選手たちはかなりストレスがあったみたいだ」

 日本代表はツアー中、さまざまな改善をしながら、2年後のワールドカップも意識して、すべてを相手に見せるのではなく制限したなかで戦ったという。スコットランド戦は約6万5000人が入ったアウェイのマレーフィールドで奮闘し、20-29と勝利には届かなかったが、藤井ディレクターは「最後に負けはしたが、そこそこ評価できる戦い方はできたんじゃないかなと思う」と評価した。

2021年秋、ヨーロッパで貴重な経験を積んだことは確かだ ©JRFU

 戦術面では、新しく取り入れているハイパントについては、「マイボールで相手にプレッシャーをかけられなかったというところが今回課題になったので、その部分では今後修正が必要だと思う」とコメント。各チームの戦い方も異なるため、それに対応できるよういろいろな戦術を作り出すことが必要で、選手たちはそれに対応できるスキルを身につけていかなければならないとした。

 スコットランド代表などは今回のオータム・ネーションズシリーズでパワープレーが減り、ポゼッションを重視してこれまでよりも攻撃的にボールを動かすなど、各国代表チームの戦い方は変わってきているようにも見えるが、「日本も次のフェーズに入っていかないとワールドカップでは戦えない、というのはコーチ陣もずっと話していた。世界がどういうふうに動いていくかということと、日本の強みをどの部分で出していくかというのは今回の欧州遠征ではだいたい見えてきたんじゃないかなと思うので、そのへんはシフトしていくと思う」(藤井ディレクター)

 日本代表は現状、チームの選手層は厚くはない。藤井ディレクターは全体のポジションが薄いとみる。新しい選手の起用やチーム内でのポジションチェンジなど考えられるが、「これがいまいちばんの僕らのなかでの心配材料」だという。「次の世代にいい経験をさせてやれていない。サンウルブズがなくなった影響もあるし、クロスボーダーの大会もまだ見えていない。そういう意味では、全体のポジションが薄い。特にロックは、(負傷者離脱が相次いだこともあり)フランカーの選手がカバーすることもある。ディアンズ(ワーナー・ディアンズ。19歳の長身ロック。ポルトガル戦でデビュー)とか、今後上がってくれば厚みは出てくると思うが、全体的に薄い。(平均)年齢もだんだん上がってきている」と藤井ディレクターは語り、危機感を持っていることを明らかにした。
「たくさん経験がある選手のなかで1人2人徐々に替えていくか、それともゴッソリそっち(将来)に向けて戦うか、どっちかにシフトしていかないと、23年以降は厳しいんじゃないかと思う」

ポルトガル戦で日本代表デビューし、試合後に相手選手と握手をする24歳の中野将伍 ©JRFU

 これまでは、サンウルブズとして日本代表レベルの選手たちを国際リーグのスーパーラグビーに送り出し、激しい試合を数多く経験させたことも2019年のワールドカップ準々決勝進出につながったが、いまはその機会がなくなり、テストマッチ以外での国際経験も求められている。
 強化を長く継続させていくという使命も持つ藤井ディレクターは、「国内のリーグワンだけではなくて、国際レベルの試合をより多くの選手に積ませたいという思いはある。それに、(下からの)押し上げがないとトップの選手たちにプレッシャーがかからない。今回、ポルトガル戦で中野選手(中野将伍)などが経験できたというのは、トップリーグ10試合分くらいの価値があると思う。リーグワン以外のところで経験させてやる場が必要だと思う」と語った。

 ラグビーワールドカップ2023フランス大会まで2年を切った。
 来年春・夏シーズンの対戦相手はまだ発表できないがだいたい決まっているとのこと。国内でティア1(強豪国)とのテストマッチになりそうだ。それとは別に、若手中心の編成でティア2やアジアのチームと試合をする可能性もある。

PICK UP