法大に逆転勝利。大東大の昨季との違いは「自信」。
リーダーが前向きで聡明だった。
昨季の関東大学ラグビーリーグ戦1部で8チーム中6位と苦しんだ大東大だが、今季は4節までに2勝2敗。勝ち点9で4位につけ、3シーズンぶりの大学選手権出場へ近づいている。酒木凜平主将は笑う。
「去年は…。選手は誰も悪くなかったんですが、いま思うと試合への気持ちが『やるぞ』という雰囲気のものではなかった。それが自信(の発露)につながっていなかった。今年は『自分たちはできるんだ』と言い聞かせて試合に臨めています」
10月30日、埼玉のセナリオハウスフィールド三郷。法大との4戦目では、ビハインドを背負ってハーフタイムを迎えた。
この日まで2勝1敗と勝ち越していた法大は、グラウンド中盤で適宜ラン、キックを使い分け、大東大に圧をかける。前半30分までのスコアを0-9とする。
33分以降は、ペナルティキック獲得後の選択肢を変える。それまで選んでいたショットによる3点追加ではなく、トライとコンバージョンによる7点追加を目指す。
NO8の大澤蓮主将はこうだ。
「1トライ1ゴール(7点)でも届かない点数にしたうえで(トライを狙うイメージだった)。できている感覚があった。試合中盤にモールを作った時には、前進できている感覚がありました。敵陣でペナルティをもらった時にはモールで行けるのでは、と、タッチを選択しました」
しかし、ミスや反則で加点できず。まもなく、大東大が息を吹き返す。
39分だ。敵陣中盤左で相手ボールスクラムを迎えると、法大のペナルティを誘う。スクラムを最前列で組むHOの酒木主将は、「相手はスクラムで体重をかけてくる。自分たちはそれに付き合わず、(互いに密着して)塊を作って組むことを意識した」。それまでやや劣勢だった攻防の起点を、時間をかけて修正していた。
首尾よく敵陣ゴール前に進むと、ラックの連取から7-9と迫る。就任3季目の日下唯志監督はこうだ。
「前半はうちのミス、反則があり、向こうの土俵で試合をしてしまったところがあった。それでも最後のほうにトライが獲れて、学生はほっとしたのではと見ていました」
ベンチに引き上げてきた選手の様子に触れ、「(酒木主将は)『負けていない。こっちの問題なので、それを修正すれば大丈夫』という感じでした。暗い雰囲気にはならずにいました」と指揮官。後半は個々の推進力が際立ち、5分、8分、10分と3本連続でトライを決めるなどし、一気に17点リードを奪う。
特筆すべきは3本目の過程か。自陣から接点に近い位置のFW陣が前に出る。右PRの野口大貴、両LOの佐々木柚樹、塩見成梧と順にオフロードパスをつなぐ。防御網を破る。
敵陣では後ろの攻撃ラインが加速する。ゴールキッカーでもあるCTBの戸野部謙が軽やかなフットワークとバックフリップパスを繰り出し、WTBの鎌田進太郎が快走。26-9。
終盤は法大のランナーが一気に走る機会を作るも、最後は大東大が29-21と逃げ切った。
パス、キックも巧みに操る酒木主将は、試合後の会見場で足をつりながらも笑顔だった。
「後半は何かを修正するというより、自分たちがやってきたことを確認し、行動に移すようにしました。(前半は)勢いを止めてしまっていたので、前に出ることは考えてやっていました」
関東大学リーグ戦からの大学選手権出場枠は上位3チーム。大東大は現体制下ではそのグループに入れずにいたが、今季は日体大から秋廣秀一ヘッドコーチを招いて防御を強化してきた。攻撃力が期待される留学生選手も、接点でタフに働く。5~6月の関東大学春季大会Bグループでは、2勝1敗と勝ち越した。
ちなみにリーグ戦勢が春季大会でぶつかる関東大学対抗戦Aの加盟校は、一昨季の大学選手権決勝を独占。事前の定めに伴い、今年度は上位5チームが選手権に出られる。
大東大は確たる手応えを、秋のリーグ戦でもにじませる。開幕から上位4校とぶつかる。4連覇を狙う東海大、昨季3位で力強い日大には5-42、0-31と敗戦も、前半のスコアはそれぞれ0-14、0-7とした。互いが元気な時間帯は、粘って競り合った。前年度2位の流経大との開幕戦は、29-7と制している。
法大が上位校との直接対決を残すかたわら、大東大は11月7日に昨季7位の関東学院大と神奈川県内の敵地で激突。日下監督は「一戦、一戦、勝ち抜かなければいけないトーナメントのような状況。次戦にもいい準備をして臨みたい」と述べる。