プロラグビー選手の育児休暇 フランスラグビー界で賛否の声
プロラグビー選手の育児休暇が、フランスラグビー界で波紋を呼んでいる。
現在プロD2(2部リーグ)のグルノーブルに在籍しているフィジー代表33キャップのWTBティモジ・ナングサがツイッターで第二子の誕生に伴い、1か月の育児休暇を取ることを発表した。フランスでは今年の7月に育児休暇取得可能期間が14日から28日に延長されたところである。
「女の子が生まれて、妻を助けるために育児休暇を取ることにした。仕事やラグビーやファンがいなくなっても、家族はずっと一緒。この決断に迷いはなかった」という。さらに「僕には15か月の娘もいて、出産後、妻がどれだけ大変だったのかというのを見てきた。彼女を助けるのが父として、夫としての責任だ」(ナングサ)
背景には、フィジーから手助けに来てくれるはずだった家族が、新型コロナウイルス感染拡大のためフィジーから出られなくなったという事情もある。
フランスでは、約7割の男性が育児休暇を取っている。一般紙のリベラションやラジオ局のフランス・インターでは好意的に報じられているが、プロラグビー界ではこれまでなかったこと。賛否両論である。
トップ14とプロD2の主催団体であるLNRは祝福するメッセージをツイートしているが、グルノーブルのファビアン・ジャンジャンバシェールHC(ヘッドコーチ)は、「プロ選手もサラリーマン。雇用主は労働法に従う。法的には彼の申請は全く合法だ」と述べるにとどまった。
プロD2は10月23日の時点で8節を終了しているが、ナングサは脳しんとうの影響で今季まだ一度もプレーしていない。
それについて、元フランス代表HC、現モンペリエHCのフィリップ・サンタンドレは、「再び試合ができる状態に体を戻すために7〜8週間必要になるだろう。つまり1か月だけではなく3か月不在ということになる。確かに権利はあるが、困難な状態のチームを置き去りにするなんて。彼はいいお給料を得て、情熱を生きているということを忘れてはいけない」と異を唱える。
選手会のゼネラルマネージャーのマチュー・ジウディチェリは、「外から見ればプロラグビー選手は、いいお給料をもらって、その情熱を生きていると思われているだろう。確かにそうだが、そこには犠牲が伴う。一方、ラグビーはチームスポーツで、チームの中で我々は生きている。チームはプレーするために我々を必要としているということは認識しておかなければならない」とコメントしている。
多くのリアクションに対しナングサは、「フランスの法律で28日の育児休暇が認められている。取得するかどうかは個人の自由。僕にとって家族は何よりも大切。僕がアウェーの試合に出かける間、またトレーニングに行く間、妻は1人で子どもを見なければならない。この決断は妻を守るためでもある。コンディションを保つためにちゃんとウェイトもランニングもしている。家族が僕のモチベーションだから、さらにパワフルになって復帰する」と応え、自身の選択に満足している。