地元ファンの声援を背に。関東学院大・川崎清純、今季初勝利への足跡。
スタンドには誰もいない。
「寂しい感じは、あるっすね」
川崎清純。関東学院大ラグビー部の副将が残念がる。
加盟する関東大学リーグ戦1部で、無観客試合が続いているからだ。通称「カントー」は、通算6度の全国優勝を誇る。キャンパスやグラウンド、寮のある横浜市金沢区エリアに、多くのファンがいる。川崎は言う。
「自転車で練習に向かっている時も、『頑張れよ』って声をかけてくれる人もいる。昔から(試合会場に)来てもらっている地域住民の人もいる。応援してくれる人たちに感動してもらえるよう、頑張りたいですね」
身長191センチ、体重102キロ。楕円球と出会った盛岡工高時代から、そのサイズと50メートル走を6.0秒で走るスピードで注目されてきた。
関東学院大に入学した際は下部リーグにいたが、2年時の入替戦では2学年上の兄・龍清(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)とともに1部昇格を達成。学生ラストイヤーは、2シーズン連続での1部挑戦が叶っている。
チームは走り込みを重視する。黄金期のOBに「自分たちの頃はもっと走っていた」と聞くにつけ、今季副将となった川崎は唖然とさせられる。ただ、いまもいまでどのチームよりも心拍数を上げてきたと思える。
「『前は無茶苦茶、走っていた』と聞いて『あ…やべーな』って。ただ、いまもなかなかだと思うんですよ」
ラグビーにはコンタクトがあるだけに、持久力と同時にフィジカリティも不可欠だ。首脳陣の方針を信じながら筋力を鍛えるべく、川崎ら4年生は肉体強化の担当コーチへメニューのマイナーチェンジを打診する。
「ウェイトのメニューは『足』『胸』『背中』と分かれる。『足』とフィットネス(走り込み)が同じ日になったりすると、『足』を『胸』に変えてもらうこともあります」
いまは下級生時から主力入りしていた最上級生が多い。各自の頑張りを結果につなげるための感性が、例年以上に鋭いようだ。一時は7人制日本代表でも活動した川崎は、試合後のミーティングについてこう述べる。
「試合の後は、それまでなら全体で集まって終わり…という感じだったところ、今年はリーダー陣が部屋で『J SPORTS』(試合映像)を見て『ここの(防御の)ノミネート、ずれてない?』と細かく擦り合わせています」
9月26日、神奈川・小田原市城山陸上競技場。リーグ戦の開幕節で、4連覇を目指す東海大に5-57で屈した。開幕前に予定していた外部との実戦練習が台風の影響で中止となったことから、「感覚がずれちゃっていたのかな」と川崎は悔やむ。
しかし、下は向かない。
「雰囲気はいい。練習ごとに(掲げた)テーマを実行する。その統一感は出ていると思います」
初戦の大敗を受け、「いかにマイボールをキープするか」について討議。ハンドリングの正確性やランナーが相手に当たる際の姿勢などを再点検し、10月9日、関東学院大グラウンドで法大を20-17で下す。前半にリードを許しながら、逆転で今季初白星を得た。
日本がウイルスの制御に苦しみ出してから、約1年半が経った。今季のリーグ戦1部の8校がファンの前でプレーするのは、10月30、31日の4戦目が最初である(事前登録が必須)。昨季7位の関東学院大はそのうちの31日、日大とぶつかる(埼玉・セナリオハウスフィールド三郷)。
まずは17日、茨城県内の相手校グラウンドで2連敗中の流経大と激突。流経大は留学生を擁し前年度2位も、川崎は「1対1では外国人にも負けないと確信している」と強気だ。