国内 2021.10.08

練習試合はテストマッチ。田畑凌(横浜キヤノンイーグルス/CTB)、3年目に懸ける

[ 編集部 ]
練習試合はテストマッチ。田畑凌(横浜キヤノンイーグルス/CTB)、3年目に懸ける
4歳の時、西宮ラグビー少年団に入り、京産大では副将を務めた。(撮影/松本かおり)



 対戦相手と対峙する前に、超えなければならないライバルが大勢いる。
 南アフリカ代表や日本代表候補をはじめ、外国出身選手ながら長くチームに在籍している男、そしてベテランも。
 横浜キヤノンイーグルスの田畑凌(たばた・りょう)は、その中でチャンスを掴もうと必死に生きる。

 京都産業大学から加入して3シーズン目。トップリーグへの出場はルーキーイヤーのカップ戦に1試合出ただけ(三菱重工相模原戦)。2シーズン過ごした中でリーグ戦出場はまだない。
「もう2学年分の後輩がいます。中堅の立ち振る舞いでいないと」と自覚する。
 リーグワン元年は必ずピッチに立ちたい。

 2年目の昨季はシーズン前に肩を脱臼し、復帰したのはシーズン中盤過ぎだった。
 BKラインはコミュニケーションが重要だ。メンバー争いに割って入ることはできなかった。

 そんな日々を過ごしたから、まず今年は「グラウンドに立ち続ける」ことが重要だ。
「日頃の練習から一貫して高いパフォーマンスを出して、コーチ、チームメートの信頼を得たい。そして練習試合に出て、いいプレーをする。それができれば、シーズンに結果も残せると思っています」と話す。

 177センチ、93キロ。均整のとれた体躯を持つ。
 武器は強さと勤勉さ。
「沢木(敬介)監督との面談でも話しました。誰よりもハードワークして、アタックでもディフェンスでも、1対1で負けないようにプレーします」と覚悟を決める。

 CTBには南アフリカ代表のジェシー・クリエル、ベテランの南橋直哉、トンガ出身のハヴィリ リッチーがいて、経験値の高いマイケル・ボンドもミッドフィールドでプレーできる。
 さらに、サントリーから梶村祐介も移籍。日本代表候補の加入で、さらに層が厚くなった。

 梶村は高校時代(報徳学園)の1学年先輩で、ともにCTBを組んだこともある人。
 実力をよく理解しているだけに、「一緒にやれるのは嬉しいし、楽しみですが、手強いライバル!」と話す。

 ただ、その表情が暗くないのは、自分を成長させてくれる存在と知っているからだ。

「高校のときは手の届かない存在でした。その後、自分も大学、社会人とプレーして成長し、少しは近づけているかな、と思っていました。しかし(当然ですが)梶村さんも進化されていました。以前とは違う自分を見せ、吸収もしていきたい。『(キヤノンでは)こういうとき、どうするの』と聞いてもらえることもあるので、一緒に良くなっていけたら、と思っています」

 1年目、2年目とコロナ禍の中で試合数が少なかったことも、実績のない自分にとっては逆風となった。
 それだけに、リーグワンで試合数が増えるのは歓迎だ。「常にグラウンドに立てる準備をしておいて、巡ってきたチャンスをものにしたい」と語る。

 沢木監督がアタッキングラグビーを前面に押し出した昨季を過ごし、そのスピリットは自身にも染み込んだ。
 大学時代は日本代表キャップ79を持つ元木由記雄コーチの指導を受けた。
「CTBは強く前に出ろ、と教わりました。メンタルが大事、と。CTBは攻守の要なのだから弱気はダメ。BKでいちばんハードに、一貫して体を張れ、と」

 12番が得意も、出番を得られるなら13番でも構わない。世界的ミッドフィルダーであるクリエルの動きを見て、学べることもたくさんある。
「彼のプロフェッショナルな取り組みは参考になるし、アドバイスもくれる」と、置かれた環境がどれだけ恵まれたものなのかを理解し、上を見る。

 2022年1月に始まる新シーズンを「チャンスの年、勝負の年」と表現する。よりハードになる新リーグの中でチームに貢献したい意欲と、あとがない危機感が入り混じる。
 開幕してからでは遅い。
 10月、11月、12月のプレシーズンマッチに、テストマッチの緊張感を持って臨む。

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