【コラム】限られて、なお。「3-6」から半世紀。
スクラム起点のサイド突破、ハイパント後のモール形成、FBの両CTBのあいだへのライン参加などを挙げ、ことにスクラムの近くでハーフ団(9番、10番)が動いて意図的にモールをつくり、そこから広く攻めるパターンを警戒している。
名手ぞろいの世界選抜はイングランドの速い防御に後半は対応、セットプレーのサイド防御を崩すことで出足を止めた。「非常に適切な作戦変更」と評価しつつ「この作戦は、体の小さな全日本のFWにはむずかしいであろう」。このあたりの鵜呑みにしない感じが頼もしいのだ。
前年の9月にイングランド来日決定を知るや、貪欲に活字の情報を集めた。遠征出発前のガーディアン紙には監督兼副団長のジョン・バージェスのコメントを見つける。そこには「基本的なフォワード・プレーを組織立てる」とあった。ここから「強力なフォワード戦を挑んでくる」と仮想、ジャパンの選手選考にも反映させた。軽量で最近の表現ならワークレートの高いベテランを外し、体格に恵まれて近場のタックルの強い人間を起用、短いキャンプで役割を仕込んでいく。
ちなみに英国の新聞は「ブリティッシュ・カウンシル(公的な文化交流機関)に通って読んだ」と本人が話すのを聞いたことがある。
イングランドの協会専属コーチで遠征における秘書役のドン・ラザフォードの指導書もつぶさに調べた。「彼の理論的方策の中から、どれを今回の来日チームに適用するかが、重要な観察ポイントとなる」。
各選手の調査も怠らない。ひとりひとりの代表歴、出身校、職業を表にまとめた。いわく「情報収集の第一歩」である。「職業はペンワークの者が多い」。したがって「下半身は弱くなっていると考えられる」。ポジションごとの体型にも関心を寄せ、だれが展開を担い、だれが「体当たり戦法」に出るのかの見当をつけた。