【ラグリパWest】ボランティアと商売。畠山和也[ラグビー用品専門店 FIELD 代表]
昔、コンバート(旧名・ウシトラ)というラグビーメーカーがあり、大阪の京橋に本店を構えていた。そこの若い人たち—大石、荒木、石元さんら—は高校の大会の時、本部のテントを立て、雑務をこなした。場所は大阪城。堀を埋めた土のグラウンドが2面あった。府内の高校生にとって、チームの強弱に関わらず、そこは身近な聖地だった。
コンバートにはラグビーで生活が成り立っていることに対する報恩があった。
今、グラウンドは堀に戻る。店は花園ラグビー場の南に移った。若かった人たちもそれぞれの人生を歩む。かずやさんはコンバートとは関係はないが、古き良き時代—義理と人情—を今に伝える役目も果たしている。
かずやさんはFIELDの2代目の代表だ。初代は父の弟である明久さん。創業は1985年。おじさんは近鉄ラグビー部の出身だった。1974年から3年間、フッカーとして籍を置いた。坂田好弘、小笠原博、今里良三、原進らそうそうたる先輩らと練習に励む。
4人のポジションと日本代表のキャップ数は順に、ウイング16、ロック24、スクラムハーフ23、プロップ17。坂田さんは関西ラグビー協会の会長になり、小笠原さんはワールドを率いた。今里さんは近鉄の監督や部長を歴任。原さんは「阿修羅」のリングネームでプロレス界のスターになった。おじさんの入社年度、近鉄は最後となる3回目の日本選手権を制する。33−13早大。12回大会だった。
そのおじさんに仕え、事業を継承される。
「ざくっと10年前くらいですかね」
近鉄は今でも取引を続けてくれている。ジャージーなどはミズノが納めるが、ボールや個人の発注などはかずやさんに届く。近鉄以外の大口は50チームほどだ。
店はJRや阪急など4線が乗り入れる神戸の三宮にある。1970年に完成した大規模商業施設「センタープラザ」の西館3階。店のホームページには、駅からの到着時間が<全速力で3分>と書かれている。
「駅から雨に濡れずに来られます」
地下や陸橋を通れば天気は関係ない。10坪と小さい店内はスズキやカンタベリーなどが所せましと並ぶ。ブランドはほぼ揃う。
ただ、築50年の施設、立地はもっとも西側(元町寄り)などもあり、店の左は軒並みシャッターが閉まっている。
「じきクリニックが開くはずです」
多くの開閉店を横目にしながら、初代から続く事業は37年目に入った。受け継いだ店は夫婦で守り続けるつもりだ。
ラグビーのお手伝いも変わらない。
「迷惑や、って言われん限り、ずーっとさせてもらえたらと思っています」
こういう人が楕円球界を下支えしている。
■RUGBY GOODS 「FIELD」■
〒650−0021 兵庫県神戸市中央区三宮町2−11−1 センタープラザ西館3階
電話番号 078−391−0058
FAX 078−391−0068
営業時間 午前11時〜午後7時30分
店休日 水曜。祝日の場合は開店