女子 2021.08.07

女子15人制日本代表・鈴木彩香、渡英経験で感じた「現実」と「普及、認知」の必要性。

[ 向 風見也 ]
女子15人制日本代表・鈴木彩香、渡英経験で感じた「現実」と「普及、認知」の必要性。
2019年7月19日のオーストラリア戦(シドニー)でプレーする鈴木彩香(Photo: Getty Images)


 これからどうすべきか。立ち止まった。

 鈴木彩香は2016年、リオデジャネイロオリンピックで女子7人制ラグビー日本代表としてプレー。長期拘束を伴う合宿を経て本番に挑むも12チーム中10位に終わった。

「ラグビー以外のものを犠牲にした末、なかなか、結果も出なかったし、自分自身、何を得たんだろうと考える、もやもやする時間が長かったんです」
 
 時間が経ってから気づいた。見直すべきは、鍛錬に挑む以前の領域だった。

 東京オリンピックの期間中にあたる2021年7月25日、女子15人制日本代表の合宿中のオンライン取材に登壇する。

 語ったのは、昨秋から渡ったイングランドでの学びだ。鈴木は今年5月まで、ロンドンのワスプス・レディースに入って女子のプレミアシップを経験してきた。 

「イギリスでは皆がコミュニケーションを取る。もし、そこでカオスになれば、コーチの厳しい一言でまとまる…みたいな。コーチから言われたこと(を遂行する)だけでなく、選手から出た提案がうまくいけばそれが正解になる。それぞれが言いたいことを言い合い、それを受け入れつつ、チームとして同じ方向を目指していくというようなスタイルです。これは、ラグビーだけをやっているのでは(作れない)。人生のなかでラグビーを捉え、何が大事か、人としてどうあるべきかを考える。そのなかで、チームのなかにいる自分がどれくらい人に影響を与えるか(というアプローチだった)」

 8歳でタグラグビーと出会い、10歳でラグビーを始めた。18歳で15人制の日本代表に入ってから、7人制を含めたふたつのナショナルチームでパス、タックルを重ねてきた。長らく界隈きっての注目選手に位置付けられ、31歳になって求めたのが新天地だった。

 ロンドンでは脳しんとうの影響で満足にプレーできなかったが、現地の女子ラグビーの取り巻く環境にインスピレーションを受けた。

「環境は日本の方が逆によかった。イギリスの場合は、(競技に専念できる選手が多い日本と異なり)ほとんどの選手がフルタイムで働いていた。そのなかでも、プレミアリーグの素晴らしいクオリティの試合が毎週末にある。一方、日本では15人制の試合を年間数試合しかできないという現実があります」

 確かに日本の女子ラグビー界では、7人制に太陽生命ウィメンズセブンズシリーズという国内サーキットがあるかたわら、15人制の大会は数が限られる。各クラブが持つ練習環境と与えられた試合数のアンバランスさという仕組み上の課題へ、いち代表選手がどうアクションできるのか。鈴木は「普及、認知」の側面から言った。

 できることを積み重ねてよい仕組みづくりを促すイメージか。

「(環境面の)差を埋めるのに何をするか。サクラフィフティーン(女子15人制日本代表)が引っ張って、勝つためのカルチャーを落とし込む必要があると感じました。男子と同じように強化する一方で、(女子では)私たちのようなトップレベルの選手が普及、認知にも関わっていかないと。SNSでの活動の発信などで日々のトレーニング、栄養摂取を見える化することで、皆に知ってもらう」

 レスリー・マッケンジー ヘッドコーチ体制の女子15人制日本代表は、2022年のワールドカップ・ニュージーランド大会への出場を目指す。複数のポジションを経験しいまはCTBが主戦場の鈴木は「ディスカッションを通じて、(チームが)よりアスリートの集団になりかけていると感じました」。
 途方に暮れた時と異なる心持ちで、若いナショナルチームをリードする。

PICK UP