【コラム】盛夏のクライマックス。
取材者として自分の後輩たちが全国の舞台に立つ姿を目にするのは、今回が初めてだった。その心境を言葉にすると、「感謝」の一語に尽きる。こんな機会を作ってくれてありがとう。ただただそう思った。ひとつのパス、ひとつのタックル、ひとつのエラーさえもが愛おしい。すべてのプレーを肯定したくなる。「全国大会で母校の応援に来る人たちはこんな気持ちになるのか」。そう実感した。
予選リーグは2敗に終わったものの、2日目以降に2つの勝利とひとつの引き分けを手にし、最終成績はボウルトーナメント5位。カップトーナメントで3位になった東海大相模との初戦を含め、全試合で2トライ以上を記録した。部員はマネージャー4人を含めて3学年で32人、うち中学までの経験者は半数以下の10人であることを考えれば、立派というしかない。
6月の県総体(15人制)は決勝で熊本西に5-21と迫った。今大会で全国レベルの圧力を体感した経験は、まちがいなく選手をもうひとまわりたくましくさせるだろう。卒業生としてはつい、「この勢いに乗って久々の花園へ」と前のめりになってしまう。
熊本高校では、春の総体を終えると3年生は受験に備えて引退するのが通例だ。秋冬まで続けるケースもあるものの、何人が残るかは代によって異なる。13人いる今年の3年生も、現状では残る部員、引退する部員、決めかねている部員が混在しているという。
ボウルトーナメント1回戦で富山第一から大会初勝利を挙げたあと、キャプテンの羽野隼矢に話を聞くと、「まずはこの大会に集中して、(残るかどうかは)終わってから考えようと思っています」と答えが返ってきた。
いいぞ。もちろんここまで来たのだから最後まで挑戦してほしいのがOBの本音だけれど、そうやって思考を重ねる過程こそが価値のあることだとも思う。ぜひ、存分に考えて考え抜いてほしい。たしかな正解のない問いにとことん思い悩んだ時間は、きっと人生の貴重な財産になる。たとえどんな結論にたどりついたとしても。