「勝利を拾えなかった」と悔やむHonda。リーグ戦成績を払拭する力は示す。
リーグ戦で苦しんだHonda HEATが、プレーオフで様変わりした。
敗れはしたが今季好調のNTTドコモと接戦を演じ、本来持つ力を示した。
「残念な結果になりました。ただ満足と言ったらおかしいですけど、チーム全員で準備してきたことを出せたことは誇りに思う」と小林亮太主将は話す。
4月25日、トップリーグ2021プレーオフの2回戦が行われた。ホンダはドコモとパロマ瑞穂ラグビー場で対戦。最大18点差をつけられたホンダは後半に怒涛の追い上げを見せたが、21―13でドコモに逃げ切られた。
互いに好機を何度も作っては、堅いディスタンスで防ぐ引き締まったゲームに、ダニー・リーHCは「どちらに勝利が転んでもおかしくないゲーム展開だった。結果、ドコモが勝利を拾うことになりました」と話す。
続けて、「勝つことはできなかったが、選手たちのやるべきアクションや気持ちはこちらが要求していることを全てやってくれた。そのパフォーマンスは称賛に値します」と選手たちを称えた。
序盤はホンダのペースで試合が進む。スクラムで優位に立ち、エリアを獲得。ゴール前まで3度迫った。トライまで結びつかなかったが、17分にPGで先制する。
それ以降はドコモのペースへと移り、ディフェンスで粘りながらも2トライを奪われ前半を3―14で折り返した。
後半開始早々にもドコモに攻め立てられ、一度はゴールラインを割られるほど崩された(TMOの結果オブストラクションがありノートライ)。直後にはシンビンでCTBショーン・トレビーが一時退場。
反撃のムードは作れないかと思われたが、自陣ゴール前から挽回を見せる。相手ボールのモールでペナルティ(アンプレアブル)を誘うと、スクラムでもペナルティを奪う。自陣を脱出した直後にジャッカルも決まり、一気に敵陣ゴール前まで迫った。
結果これをスコアできず、逆にファンブルしたボールをドコモが一瞬でトライまで持っていき、21―3まで点差は開いた。
リーグ戦ではここから崩れることも多かったホンダだが、この日は違った。
「この試合のキーワードはHEAT TIME(今季のスローガン)でした。つまり自分たちがどのような状況でも楽しむということ。ここからはトライを取るしかなかったので、思い切りトライに向かって進めた」と小林主将は振り返る。
待望のトライが生まれたのは23分。ハーフウェイライン付近のスクラムから狭いサイドを崩した。大外で受け取ったWTB生方信孝はライン際でTJ・ペレナラを抜き去ると、パントを上げて自らインゴールで抑えた。
「チームに勢いをつけたかったので、思い切ったプレーを自分の中で選択しました」と生方。願い通り、ここから勢いはホンダに傾く。
27分、同じような位置のスクラムから今度はオープンサイドに展開。CTBクリントン・ノックスの大きなゲインで22㍍ラインを割り、最後はLOフランコ・モスタートが押し込んだ。
コンバージョンが2本外れて8点差となったことで(13―21)、逆転への機運が少し遠のきそのままノーサイド。前半の序盤でスコアできなかったことも響いた形になった。
「精度に尽きると思われます。前回の三菱戦では9トライをすることができたので、その能力はあれど精度に欠けるとこういうプレーになってしまう」とリーHCは肩を落とした。
だが、シーズン序盤で苦しんだスクラムは大きな修正を見せた。「ホンダに来てから一番苦労している」と吐露していた4季目のリーHCだったが、第3節から徐々に改善。サニックス戦で負った腰のケガで、約1か月戦列を離れていたPR具智元は、「今日はスクラムが武器として使えていた」と語る。
「サントリー戦(2節)が終わってから、フロントローでこっちの方がいい、あっちの方がいいと話し合った。若いプロップたちが発言してくれて、トヨタ戦(3節)からいい感じにまとまることができました」(具)
初の8強入り対決はドコモに譲ることになったが、間違いなく今季ベストゲームで最後のトップリーグを締めくくり、来季に向けた希望が見えた戦いぶりだった。