東京五輪まであと約100日 岩渕HC「アピールする時間は限りなく少なくなってきている」
東京オリンピック開幕までの100日カウントダウンを間近に控えるなか、7人制ラグビー(セブンズ)の日本代表候補選手たちはドバイに遠征中で、オリンピック出場権を獲得している他国の代表チームなどとともに『エミレーツ・インビテーショナル・セブンズ』に参加している。
4月2日、3日に開催されたWEEK1で、男子はウガンダとスペインには勝ったものの、カナダ、アルゼンチン、ケニアに敗れ4位。女子はケニアを下したが、アメリカ、フランス1、同2、ブラジル、カナダに敗れ6位に終わった。8日、9日にWEEK2の試合がおこなわれる。
WEEK1を終えて、約1年ぶりの国際大会出場となった男子セブンズ日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチと松井千士キャプテンがオンライン会見で手応えなどを語った。
「改善しないといけない点はあるが、前向きな形でドバイで進めていることについて非常に嬉しく思っている。2週目がまだあるので、次に向かっていい準備をしていきたい」(岩渕HC)
「選手としては久々の試合で楽しめていて、やっとセブンズが戻ってきたという感じ。エンジョイできている」(松井)
今回のドバイ大会は、日本のほか、東京オリンピック出場を決めているカナダ(男・女)、ケニア(男・女)、アルゼンチン(男子)、アメリカ(女子)、ブラジル(女子)も貴重な実戦の場とし、6月の最終予選を控えているフランス(男・女)、ウガンダ(男子)、チリ(男子)も参加している。
岩渕HCによれば、男子では、フランスのスコッドは最も多い20人前後の選手を連れてきていて、オリンピックへ向け、かなり本格的に力を入れてきていると感じたという。他国もほとんどワールドセブンズシリーズの常連で、ベストメンバーで臨んでいた。そんな強豪たちと1年ぶりに試合をし、世界との差をどう感じたか。
「ケニア戦、アルゼンチン戦はチームとしてたくさん反省がある。一方で前向きな点は、ボールの確保は初戦のカナダ戦以外ではできていた。初戦のカナダ戦は久しぶりのゲームということもあり、選手、そして私を含めたスタッフも緊張して硬くなって、前半、ポゼッションを取れなかったというのは大きな反省点。それ以外の試合はボールが取れないということはなかった。サポートが少し遅れるとか、キャリーの仕方が悪くなるとか、そういったものは自分たちのミスとして捉えている。そこについては、これからもう1回大会があるので、十分改善できると思うし、選手たちもそう捉えていると思う」(岩渕HC)
「これまでは、チーム内や国内の外国人選手、大学生とやることしかできなかったので、世界との差がどのくらいあるか不安はあった。1発目のカナダ戦は緊張して、僕たちの実力を出せなかった。しかし、その後は修正できて、いつもギリギリで負けていたスペインとの試合は最後に勝ち切れたので自信につながった。世界との差は、広がったわけでもなく、僕たちのなかでは手応えを感じた」(松井)
この1年間で環境が変わり、プロ選手になった松井は、個人的にもフィジカル面の成長を感じているという。体重も増えて、スピードも落ちることなく、海外の選手に当たり負けすることが少なくなった。WEEK1を振り返り、「フィジカルで負けたというより、コミュニケーション不足でディフェンスのコネクションが切れてしまっていた。僕らは1on1でディフェンスするチームではないので、チームとしてしっかりディフェンスをコネクションしないと。サポートが遅れてしまったところがあったので、コミュニケーションを直していければ戦える相手だし、次は勝てると思う」と語った。
東京オリンピックまであと3か月半。ドバイでWEEK2を戦ったあと、日本に戻って強化をし、チームとしてさらに国際経験を積みたいと岩渕HCは言う。
「海外へ行くかの、国内に呼んでやるのか、両オプションがあると思うので、そこを考えながら。一方で、できないことも視野に入れて計画している」
東京オリンピックへの最終登録メンバーは12人。代表入りをめぐるチーム内の競争も激しくなっている。ドバイでゲームに出るコンディションではなく、国内に残ってトレーニングを続けている小澤大、藤田慶和、津岡翔太郎などを含め、アピールする時間は少なくなってきている。
「チーム、選手には、『アピールできる局面はかなり少なくなっている』と直接、私の方から話している」と岩渕HC。「今回の大会では、ある程度、来ているメンバーには時間的にも公平に機会を与えている。今後はオリンピックに向けたチーム作りやメンバーを固めていく時期になるので、それぞれがアピールする時間は限りなく少なくなってきている」
12人を絞る条件は何か。訊かれた指揮官はこう答えた。
「さまざまなポイントから見るが、誰がオリンピックに一番出たいと思っていて、誰が日本をリードするという強い気持ちを持っているか。ラグビーのスキルもいろんな部分ももちろんあるが、やはりその部分(気持ち)を最後に出せるかどうか。選手たちにはこの貴重な機会のなかで出してほしいと思っている」