流経大柏を追い詰め、秋田工に大勝。監督は大謙遜も大分東明の実力は確か-選抜チームリポート-
「いやいや、そんな。まだまだですよ」
大分東明の白田誠明監督はとにかく謙遜する。
32校が出場する全国高校選抜大会。
大分東明は1回戦で敗れるも、確かな爪痕を残した。
1回戦は昨季花園8強の流経大柏と対戦。
前半こそ流経大柏のFWを前面に出したアタックに差し込まれ、7-22まで離されたが、後半怒涛の追い上げを見せた。
昨年の花園メンバーが残るBK陣が躍動し、WTB日隈太陽②やCTB浦山丈①らがゲインを切る。開始早々にペナルティゴールとFWのピックで取り切り、差を縮めた(17-22)。
その後、ペナルティゴールを返されるが25分、獅子奮迅の活躍を見せていたNO8ダウナカマカマ・カイサ①が2人を弾き飛ばして、この日2本目のトライ。3点差まで詰めた(22-25)。
終了間際も敵陣深くまで攻めていたのは東明だった。だがラインアウトモールで逆転を狙った結果、インゴールを割ることができなかった(残り3㍍ほどだった!)。逆にボールを奪われ、一気にトライまで持っていかれた。
22-30。
白田監督はこの接戦を「いつも通りに戦っていればこのスコアにはなりません」と振り返る。
「流経さんはこれまで練習や試合が難しい中で、大分県は比較的練習ができる環境だった。その差が後半のフィットネスで出ただけです」
FL馬越涼主将②は、ゲーム理解度が高く弁が立った昨季主将のSH宮川博登とは異なり、黙々と下働きをこなすリーダーだ。白田監督は馬越主将の献身性を尊重しつつ、「もう少しおしゃべりができるように」と願う。馬越主将もその必要性を肌で感じた。
「試合中に自分たちは静かで、何が悪いかを反省できてなかった。流経さんはコミュニケーションが取れて、ちゃんと修正しながら戦えていた」
そういう意味でも「全国の力を知れるというのはありがたかった」(白田監督)。
だから戦うモチベーションが難しいとされるコンソレーション(敗者戦)を無駄にはしなかった。「東明がやってきたラグビーのプライドをかけて戦おうと話しました」(白田監督)。
相手は昨季、東明と同じく花園3回戦進出の秋田工だったが、序盤から気迫あふれるプレーで相手を突き放した。54-12の圧勝と予想外の結果となったが、白田監督はあくまでかしこまる。
「前日の試合の疲れが秋田工業さんに見えました(天理と対戦●12-24)。スキルというよりモチベーションで差が出たのかなと」
ただ東明も決して準備万端というわけではなかった。前日の流経大柏戦で負傷したSO安藤拓志②が欠場。急遽、CTB浦山が経験のない10番を背負った。さらに留学生のNO8カイサやCTBナブラギ・エロニ①はすでにチームの主軸だが、昨年の10月に日本に来たばかり。ようやく日本語を理解し始めたところだ。
そしてこの日先発15人のうち、実に11人が1年生(新2年生)だった(流経大柏戦でも10人)。1年生はまだ合宿にも行ったことがなく、試合経験も当然少ない。「多くが高校ラグビーをまだ経験できてない」(白田監督)。
2年前が花園初出場。昨季は3回戦まで進出した。今大会は連携不足が否めない中、関東の強豪校と堂々渡り歩き、東北大会の優勝チームに大勝した。
大分東明は上昇気流にまだまだ乗っている。