国内 2021.02.26

ベン・スミスに学ぶ。日本代表ラファエレ、隔離生活経て磨く「ハードワーク」。

[ 向 風見也 ]
ベン・スミスに学ぶ。日本代表ラファエレ、隔離生活経て磨く「ハードワーク」。
2月20日のNEC戦でトライを決める神戸製鋼のラファエレ ティモシー。左後ろがベン・スミス(撮影:毛受亮介)


 爽やかな顔つきで泥臭さを重んじる。

 ラグビー日本代表23キャップ(代表戦出場数)保持のラファエレ ティモシーは、多彩なオフロードパス(背後に腕を通して投げることも!)、左足でのキックといった華麗な技を称賛されながら、自身の本当の長所は「ハードワーク」だと分析する。

 同じポジションの相手を運動量で凌駕し、素早く位置取る。何より芝の外でも、献身をいとわない。

 所属先の神戸製鋼が活動を休んでも、ラファエレはラファエレだった。クラスターの発生で活動を制限された1月中旬頃には「この期間中、どれだけ動き続けるか」をテーマに据えた。

「おそらく、他のチームも選手も努力する。その間に自分が努力を怠ったら、それだけ遅れを取ってしまう」

 自宅に買っていたワットバイクにまたがり、チームに提案されたメニューで汗をかく。同僚のリチャード・バックマン、ベン・スミス、中島イシレリらと、動画つきの電話でつながりながら。

「朝、起きてから『いまからワットバイクセッションやるけど、誰か興味ある?』とLINEをして、そこで乗っかった選手と一緒に」

 ラファエレ、バックマン、スミスがスピードやスタミナの求められるBKの選手なのに対し、中島は身体の大きさやパワーの必要なFW第1列だ。中島がその3名と同じメニューをこなすのはさぞ苦しかったろう。そんな問いに、ラファエレは笑った。

「ある日、誰かが『やろう!』と持ち出して皆で『やる』と決めたメニューが、イシにとってきついものだったことがありました。もちろん、自分たちにとってもきつかったですよ」

 身長186センチ、体重100キロの29歳。2019年のワールドカップ日本大会では、アウトサイドCTBとして5試合に出て8強入りした。2023年のフランス大会でも活躍が期待されるも、「現時点ではあまりジャパンのことは考えていないです」。まずは神戸製鋼の一員として能力の開発に励み、国内最高峰トップリーグの新シーズンを充実させたい。

「チームがトライを獲り切るチャンスを演出したい。ディフェンスでは、タックルの成功率と質を上げたいです。神戸製鋼に入ったばかりだった昨季(ワールドカップ後に本格的に合流)は、それまで自分が(前所属先などで)したことのないディフェンスシステムのなかで(タックルの)数値が思うほど高くなかったのです。だから、成長できる。まずは神戸製鋼でトップリーグ優勝にフォーカスする。神戸製鋼で良いパフォーマンスをすることが、次につながる」

 神戸製鋼は最後にシーズンが成立した2018年度の王者。今季も元ニュージーランド代表アシスタントコーチのウェイン・スミス総監督のもと、国内外のスターがビジョンを共有する。

 なかでもラファエレを感動させる仲間が、新加入のスミスだ。

 ユーティリティBKとしてニュージーランド代表84キャップ保持のスミスは、2月20日の開幕節(大阪・東大阪市花園ラグビー場/対 NEC 〇47-38)でも持ち味を活かす。

 後半3分には、右タッチライン際を抜け出す味方へ付いてトライを決める。その他の場面でも、自ら球をさばいた方角への援護、鋭いタックルを喰らいながらも味方の手元へ届けるパス、防御の意表を突くキック、自陣ゴールライン手前でランナーを仕留める防御と、渋い光を放った。

「多くを学ぼうという視点で、彼を見ています」

 ラファエレは戦前から、名手のインテリジェンスに喜んでいた。

「彼はラインブレイク(味方の突破)が起きた時、常にそこへ顔を出す。そのために彼がどうしているのか、ポジショニングの部分を含めて見ています。彼は、ラインブレイクを予測できていると感じます。(彼我の状況を踏まえて)『ここで突破が起きる』を把握できているだろうなと。長い経験から、そこがわかっているのだと思います」

 活動再開後は、部内での取り決めが変わった。かねて推奨されていなかった外食は、完全に禁止となった。自宅とトレーニング拠点を行き来するほかは「外へ行くとしてもスーパーマーケットや弁当屋しか行きません」と、愛犬家のラファエレ。世界的な実力者に学び、「ハードワーク」の中身を更新する日々だ。

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