【ラグリパWest】昼食バイキングで初制覇を。 京都成章高校
京都成章は老ノ坂峠のそばにある。
読みは「おいのさか」。西にある亀岡と洛中をつなぐ。明智光秀はこの高みを駆け下りた。「敵は本能寺にあり」
主人の織田信長に反旗を翻す。
この私立校は山の斜面にある。全日制普通科。男女の生徒数は1600と大規模だ。校内は階段と坂。そのため体力が要求される。エネルギー消耗はお昼でチャージ。バイキング形式の食事は学校負担があり、200円と安い。
「食堂のごはんとちゃいますか」
湯浅泰正は笑って答えた。
「どうして選手たちの体は大きいのか?」
ラグビー部の部長兼監督への問いは、昨年11月、花園出場を決めた時に出た。
ある日のメニューはハンバーグ(おろしポン酢ソース)、きんぴらごぼう、ペペロンチーノなど7品。おかずを盛るのは大皿に1回だが、ごはんと味噌汁はお代わりできる。
「美味しいです」
森山飛翔(つばさ)のお昼休みは楽しい。180センチ、104キロのPRはこの春、新2年生になる。新人から30人の全国大会登録メンバー入り。一昨年から始まるこの昼食システムは成長の一助になっている。
森山にとっての2年目は、チームとして初の全国優勝を獲るための1年でもある。
湯浅は力を込める。
「もちろん狙いたいです」
年末年始の100回大会。京都成章は決勝で桐蔭学園に敗れた。スコアは15−32。前半は10—10の同点。後半、力尽きる。初の決勝進出の勢いは続かなかった。
前年の99回大会は8強敗退。優勝の最右翼であるAシード3校に入る。FWは超高校級の体格だった。8人平均は182センチ、100キロ。同じ年、大学を制した早稲田は1センチ低く、2キロ重いだけだった。それでも常翔学園に24—27と逆転負けする。
2年連続の悔しさの中、浮かび上がってきたことがある。
「体を大きくする。そして走れるようにする。それは、もちろんのことです」
バイキングはその効能を高める手段だ。湯浅は一拍置き、続けた。
「その上で、体の動かし方、使い方をものにしないといけないと思っています」
湯浅は質問者を横に立たせ、手で肩を突くハンドオフをする。
「ウチはこれだけなんですね」
手のひらと二の腕だけの力だ。
「強いチームはぐーっと来ます」
湯浅は外側の右足から力の伝わりを指で描き、手のひらを終点にする。体全体の力を1点に集める説明をした。
体の大きさでタックラーを飛ばせた、と思っても相手は沈み込み手を放さない。結果、絡まれるようにして止められる。
それを打破するためには、さらなる衝撃が必要になる。体の強さはもちろん、股関節を中心にした柔軟性や体重移動がいる。
その部分を新しい年度に体得したい。逆に言えば、京都成章は赤き大優勝旗を得る最後のレベルに来ているといえる。