下馬評上々も昨季王者に及ばず…。2020年度の帝京大ラグビー部。
1月2日の大学選手権準決勝。帝京大ラグビー部は概ねスクラムを優勢に進めた。
ハーフタイムの前にペナルティトライを決めた。敵陣ゴール前右で得た自軍ボールの1本で、対する早大のパックを押しつぶしながら前に進んだ。
ただし、先頭にいた右PRの細木康太郎は言う。
「強みとしているスクラムでプッシュできたのはいいんですが、後半、少し食い込まれた部分があって、そこは改善しないといけない」
身長178センチ、体重115キロの3年生は、すべてのスクラムを制圧できたわけではなかったことを悔やんだ。
この日の帝京大は、早大のグラウンド中盤外側への展開、ラインアウトからのモールに苦しむ。細木いわく、「モールに関しては途中、選手たちでどうしていこうかも話し合ったんですが、そこもなかなかうまく行かず」。リードを奪えたのは、ペナルティゴールで先制した前半4分からの2分間だけだった。
後半37分、敵陣ゴール前右中間。自軍ボールスクラムで後退した。最前列の選手は消耗が激しくメンバーチェンジの対象となりやすいが、細木はまだフィールドにいた。一緒に先発していた左PRの近藤芽吹、HOの江良楓も然りである。岩出雅之監督はこうだ。
「1、3番(細木を含めた両PRの番号)は、最後の最後には前半のメンバーの方が仕事をしてくれる」
帝京大はなんとか球を保持し、アウトサイドCTBの尾崎泰雅のトライなどでスコアを詰める。
東京・秩父宮ラグビー場のスコアボードを「27-33」とした。
ノーサイド。2連覇のかかっていた早大に敗れた。
これで引退する尾崎は「後輩に謝りたい」。2017年度まで大学選手権を9連覇してきたチームにとって、4年生は優勝を知る最後の世代だった。
指揮官が「学生はしっかりとゲームを運んでくれたと思います。ただ、モールの部分でもう少し抵抗できれば。最後の最後まで、逆転を目指しましたが、そこで至らず残念です」と締める隣で、ゲーム主将でFBの奥村翔は鼻をすすっていた。
「…監督もおっしゃった通り、何か自分らに足りないところが。ただ、ブレイクダウン(接点)では練習してきた通りできて、自分たちは出し切ったので、悔いはないです」
今季は他の全クラブと同じように、一時解散を余儀なくされながら強化を図ってきた。
開幕前の下馬評は高かった。特に、細木らFW陣の強靭さが光った。10月11日には、東京・帝京大百草グラウンドで加盟する関東大学対抗戦Aの筑波大戦を54-17で制した。筑波大は10月4日の初戦で、他部に比べ自粛前の鍛錬期間が長かった慶大を30-19で下していた(秩父宮)。
ところが終わってみれば、帝京大は対抗戦での戦績を4勝3敗とした。早大、明大、慶大に土をつけられた。特に今季初の秩父宮での試合となった早大戦(11月1日)にあっては、大舞台で「(多くの選手が)緊張した」と奥村は明かした。
一発勝負の選手権でも、2季ぶりに進んだ準決勝で戦い終えた。岩出監督はこう見立てた。
「けが人も出ましたし、他大学の努力もあった。今季は変則日程のなか、どこにとっても不足分があったと思います。我々の調子がよかったとしても、それはその不足分(があった)なかでの調子です。今季の対抗戦で少しずつ経験させていただいて、成長してきた。ただ、ゲームのなかでまだまだ未熟な部分があって――学生は精いっぱいやりましたけど――力足らずになってしまった」
細木は日体大との今季初戦で肉離れを起こし、「検査をして、正直、今季はきついんじゃないかという診断を受けた」。最終的には大学側の支援や度重なる治療で、選手権から復帰が叶っていた。ありがたかった。
「僕はまだ3年生で、来年もあるということで、4年生に来年は頑張れよと声をかけてもらって。徐々に、来年に向けてやっていかなきゃいけないと思いました」
細木は、新しい時代のクラブに栄華をもたらしたいと誓う。