コラム 2021.01.27

【ラグリパWest】ラグビーで人間的成長を。 吉田大樹 [那賀高校監督/和歌山県]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】ラグビーで人間的成長を。 吉田大樹 [那賀高校監督/和歌山県]
7人制や15人制の日本代表選手から高校教員になった吉田大樹さん。現在は和歌山の那賀高校で教職に就く。ラグビー部監督もつとめている


 紀ノ川は東から和歌山を貫いている。
 有吉佐和子は同名の小説で、「うっついのう」と表現した。美しいの方言。この大河に明治、大正、昭和の3時代を生きた素封家を擬した。

 紀州人にとって母なる流れを北に上がれば那賀高校はある。読みは「なが」と濁る。
 吉田大樹はこの県立校にいる。保健・体育教員は日本代表のFBでもあった。

 愛称「ヒロキ」はラグビー部の監督でもある。
「生徒ひとり一人能力が違います。その生徒に合ったアプローチや言葉の選び方、教え方を考えていかねばなりません」

 主将はNO8の平山顕示。新3年は不惑になる指導者に大いなる尊敬を向ける。
「ものすごくいい先生です。経験が違います。例えばイシレリのことや少しのケガならポジションをとられないように練習に出ていた話が聞けます。僕たちは恵まれています」

 中島イシレリは日本代表になるため、LOからPRに位置を変えた。自身が少々のことなら休まなかったことも含め、楕円球にかける執念を高校生たちに伝える。

 昨年の花園県予選は初戦で和歌山北に12−43で敗れた。100回記念大会である。
 その時の部員は平山を含め13人。校内から助っ人の申し出があった。

 2人は運動部員。野球は「体が強いから」とLOに、ハンドボールはWTBに入ってもらった。吉田は振り返る。
「ありがたかったですね。出れるんやったら、単独で出たいと思っています」
 主とするのは、日の丸を背負った時の戦術や戦略の伝達ではない。部員集めである。

 和歌山は野球県だ。
 古くは桐蔭や箕島(みのしま)、今は智辯和歌山が全国制覇を成し遂げている。ラグビーは全国2回戦止まり。2019年のワールドカップが劇的に現状を変わるわけではない。

 学校は白球が盛んな岩出にある。和歌山駅からJRに乗り、東へ20分ほどで着く。
 その創部は1971年(昭和46)。半世紀を迎える。花園出場はない。吉田はそのチームを保ち、強化を図る。

 和歌山と吉田は重なる縁がある。
 夫人の実家はこの温暖の地だった。居を移したのは6年前、2015年である。
 それまで、スピードや長いキックで7人制と15人制の両方で日本代表をつとめた。キャップは7を持つ。

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