その他 2021.01.19

ラグビーと地域の橋渡しを-Regional Development Officer募集-

ラグビーと地域の橋渡しを-Regional Development Officer募集-
ラオスで実施したインクルーシブ教育推進事業


 日本ラグビーフットボール協会(JRFU)がRegional Development Officerを募集している。
 RDO(アールディーオー)と呼ばれるこのポジションは、日本語では「地域普及担当者」。地域の実情を踏まえながら、より多くの人々にラグビーの魅力を伝え地域活性化につなげる役割を担う。

 JRFUが初めてRDOを採用したのは2017年のこと。関東・関西・九州に各1名を配置し、ラグビーワールドカップ2019に向けて開催都市を中心に各地域でラグビー普及に奔走した。

 そのひとり、九州地域を担当した星野幸喜氏(37)は大分県出身。大分県立海洋科学高校でラグビーを始め、名城大学、三菱自動車水島、サニックス、IBMとラグビーキャリアを積んだ。2016年に現役を引退し、今後を模索していたときにJRFUのホームページでRDOの公募情報を見つけた。
「もともと地域おこしに興味があり、地域おこし協力隊(※1)でUターンを考えたこともありました。大好きなラグビーの普及と地域おこしが両立できるRDOはまさに自分が求めていたものでした」

 RDOの日々の業務は事務所での作業や現場での雑務など、特別な何かがあるわけではない。RDO自身が主役になることはなく、都道府県ラグビー協会や自治体、ラグビーチームといったステークホルダーの連携が進むよう促す潤滑油の役割を担う。社会人ラグビーチームが小学校を訪問する「体験授業」や、平日のラグビー教室である「放課後ラグビー」などの事業を、地域の特性を知ったうえでマッチングさせる。ただラグビーを売り込むだけでなく、ステークホルダーの要望を汲み取り、地域リソースを巻き込んで事業につなげる。JRFUが2017年から取り組むラグビースクールの「全国一斉体験会」も、RDOが中心となり全国のラグビー協会や各ラグビースクールと連携し実施している。
 選手時代のポジションはロックで190センチと体は大きいが「小回りが利くのが自分の強み」と、3年間沖縄県を含む九州地域を駆け回った。

ラグビーワールドカップ2019開催都市のラグビー普及担当者会議

 そんな、いわばラグビーの営業マンがゼロから形作った事業が2018年にラオスで実施した国際交流プログラムだ。日本スポーツ振興センター・大分県・別府市・JRFUが連携し、4者の強みを生かしてタグラグビーを通じたインクルーシブ教育の推進に取り組んだ。
「地域の人たちが自分の強みややりたいことを明確にできれば、素晴らしい事業を実現できる。やってみたらわかることがある。それを体感できました」

 別府市は東京オリンピック・パラリンピックのラオスホストタウンとして、その後も「Pass It Back」(※2)などラグビーを通じたラオスとのつながりを保っている。また、現在はラグビーのキャンプ地としても国内外で認知が高まり、トップチーム等がキャンプを張るなど、地域の魅力を最大限活用してラグビーワールドカップのレガシーにつなげている。

 星野氏がRDOとして心掛けていることは地域の主体性を尊重することだ。
「ラグビーが好きであること、ラグビーの知識を持ち合わせていることももちろん重要ですが、いかに地域に愛着を持てるかがRDOの肝です。その地域のラグビーを盛り上げていく過程で接するのは絶対的に地域の人々。そこを飛び越して何かが生まれることはないと思います。イベントや事業に向けて、地域関係者が自発的に、主体的に動き始めるようになるととてもやりがいを感じます」

 自身のラグビーキャリアを「決して王道ではなかった」と振り返る。出身高校のラグビー部は廃部となり、IBMのラグビー部も規模が縮小された。

「2019年のラグビーワールドカップがあれだけ盛り上がる一方で、全国にはラグビーをプレーすることができない、部員減少により廃部になるチームがある現状があります。華やかな舞台に注目しがちですが、本当に直視しなければならない現実がそこにはあります。だからこそ、誰かを置き去りにしてはいけない、目が向きづらいところにこそ目を向けたい」という強い気持ちがある。

 ラグビーワールドカップ2019が終了し、新型コロナウイルスの影響を受けてスポーツへの関心が薄まりつつある現状がある。だからこそ、地域の求めることを察知しラグビーにつなげることが必要だ。

 地域の人に共感し、共に歩みながら一隅を照らすことのできる人材を待っている。


<普及育成委員会地域普及担当者:RDO(リージョナル デベロップメント オフィサー)募集>
2021年1月30日(土)必着 ※ 郵送のみ受付
https://www.rugby-japan.jp/news/2020/12/23/50631


※1 地域おこし協力隊
都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地盤産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」をおこないながら、その地域への定住・定着を図る取組。(出典:総務省HP)

※2 Pass It Back
チャイルド・ファンドがワールドラグビー、アジアラグビーと協働して実施する、スポーツと国際開発を組み合わせたプログラム。貧困などの困難な立場にあるアジアの若者や子どもたちが、ラグビー(タグラグビー)を取り入れたカリキュラムを通じて、日常のさまざまなリスクに対処するためのライフスキルを身につける。

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