国内 2021.01.03

天理大フィフィタ、バージョンアップの軌跡。1月11日に大学選手権決勝へ。

[ 向 風見也 ]
天理大フィフィタ、バージョンアップの軌跡。1月11日に大学選手権決勝へ。
力強い走りで明治大のディフェンスを突破する天理大のシオサイア・フィフィタ(撮影:高塩 隆)


 千両役者がだめを押した。

「これまでの天理大のなかで、いまが一番強い。僕のなかではそう思います。スキルも上がって、いいラグビーができている。日本一という目標を皆、意識しています」

 1月2日、東京は秩父宮ラグビー場。大学選手権の準決勝第2試合でのことだ。

 19点リードで迎えた後半33分。天理大副将でアウトサイドCTBのシオサイア・フィフィタが、敵陣10メートル線付近でパスを受け取る。

 おとり役を担う味方の後方から、細かくステップを刻む。防御網をすり抜け、快速を飛ばす。

 敵陣ゴール前へ進む。一転、右大外へロングパスを放つ。

「抜けた時、外からのコールが聞こえただけで『(誰か)いるんじゃないかな』とスペースに放ったら…」

 WTBの土橋源之助がフィニッシュ。直後のゴールキック成功で41-15。天理大は一昨季の決勝で敗れた明大を破り、2季ぶりのファイナリストとなった。

 「勝った瞬間は嬉しくて」とは、FLの松岡大和主将。ノーサイドの瞬間は、すぐに担当レフリーへ握手を求めた。喜びを噛みしめた。

「僕自身は最後までやり切ろうと思っていたので。それまで悔しい思い、いろんな思いをしてきているのもあって泣く選手もいたのですが、皆に『最後までやり切ろう』と声掛けをしていました」

 11日に東京の国立競技場である決勝戦では、昨季王者の早大に挑む。準決勝で序盤から再三チャンスメイクのフィフィタは、流ちょうな日本語で意気込む。

「まだ早稲田の(準決勝の)映像は観ていないですけど、いいラグビーをしてくると思う。残り1週間。日々の練習でしっかり試合をイメージしてやりたいです」

 2014年にトンガから来た。日本航空高校石川時代から名を売り、高校日本代表となった。天理大でも20歳以下日本代表、ジュニア・ジャパンといった若手の精鋭集団に名を連ね、早期の正代表入りを目指した。

 昨年1月には、スーパ―ラグビーに日本から加わったサンウルブズと契約した。シーズンが3月に中断するまでの全6試合へ出場した。世界の一線級に触れたのを受け、私生活を変えた。公式で「身長187センチ、体重105キロ」の身体を絞り込んだ。

「食事は皆より、少し、減らすくらいです」

 自身のSNSでは同僚とラーメンをすする様子を共有も、それはあくまで「2週間に1度くらい」の楽しみだという。

 心拍数も上げた。昨春以降、水面下で編成された2020年度の日本代表候補に名を連ねていた様子だ。6、7月に開催予定だった代表戦に向け、定期的なオンラインミーティングに参加。走り込みや筋力強化のメニュー、定期的なフィットネステストが課された。

「フィットネスは必要。きちんと準備してください」

 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチから、画面越しにこう言われたという。

「(メニューは)きつかった…。でも、自分のためにも、(やって)よかったです」

 チームがコロナ禍に巻き込まれた8月も、隔離状態のフィフィタは身体をいじめ抜いた。

「(雌伏の時は)Zoomで『●時から●時まで』とリンクを作ったら、皆、思ったより、集まってくれていました。部屋のなかでもできるトレーニングをしました。いまは(活動時以外は)天理市から出たらだめ。それを、守っています」

 秋以降の公式戦では、力強さと同時に鋭さを示す。新春の好走の裏に、努力の跡をにじませるのである。同学年のチームメイトもうなずく。

「かなりストイックになったような。よく走るし、食事も気をつけているのが身体に出ている」

 今年の日本代表活動へもぜひ加わりたいというフィフィタ。まずはチームの悲願である初優勝へまい進する。

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