7月まで寮に入れなかった大東大、鈴木匠副将の走りで苦境を乗り越えるか。
今季初勝利を挙げた大東大でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのは、副将でFBの鈴木匠だった。
11月3日、東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場。加盟する関東大学リーグ戦1部の4試合目で、関東学大を31-26で制した。
「(不調だった前半の分を)取り返そう」と意気込んだ後半に6分、11分と、自ら連続トライを決めた。一時は28-5とペースをつかんだ。
「(点を)取り切ることを目標に練習してきた。それ(成果)が出せた場面があったのは評価したいです」
いずれの場面でも、周囲との連係で大外のスペースを破る形でフィニッシュ。ハーフタイムに相手防御の傾向を「相手が内側に寄りやすい。外に回したら余る(数的優位ができる)んじゃないか」と分析した結果である。修正能力を示した。
続く23分には自軍に一発退場者が出たため、苦戦を強いられた。ただし、「交代したメンバーが全員、走ってくれて、勝利につながった」。終盤の失点シーンからは、発展途上のクラブにとっての貴重な課題を抽出した。
「ディフェンスで前には出ていたんですけど、エリアごとの守り方に共通認識がなかった。エリアごとのディフェンスを意識したいです」
身長183センチ、体重86キロの大型BK。スペースへ大胆にキック、パスを放つ。機を見てラインブレイクを図る。
小4から相模原ラグビースクールへ通い始め、日本代表主将のリーチ マイケルの母校でもある札幌山の手高を経て2017年に大東大入り。最終学年で迎えた今季は副将を担う。
ラストイヤーは苦境に立たされている。大学当局から部活動の停止を命じられたのは前年度末にあたる3月下旬。「緊急事態宣言が出るとわかったので、寮を解散させました」とは日下唯志監督。4、5、6月は活動休止期間となり、その頃は構内への立ち入りも禁じられた。
7月上旬にはグラウンドが使えるようになったが、指揮官いわく「寮は密の問題などがあったため使用許可を得るのに時間がかかった。新しいガイドラインを作り、承諾を得たのは、7月中旬でした」。10月4日開幕のリーグ戦では開幕2連敗と苦しんだ。
何より鈴木は初戦を終えるや、しばらくけがで欠場する。「僕の代わりの青木拓己もポテンシャルが高く、安心して任せられる選手でした。僕にない武器があるから、それを使っていこうという声掛けもしていました」。FBへ回った2年生SO、青木を褒めるほかない。今季昇格した関東学大との接戦は、鈴木にとっての復帰戦だった。
昨季4位の大東大は以後、前年度の上位3チームと相次ぎ激突。11月15日にはディフェンディングチャンピオンの東海大とぶつかる。