国内 2020.11.11

3年ぶり19度目全国行きの目黒学院 熱心な海外出身選手の存在もいい刺激に

[ 向 風見也 ]
3年ぶり19度目全国行きの目黒学院 熱心な海外出身選手の存在もいい刺激に
目黒学院の注目選手のひとり、2年生のシオネ・ポルテレ(撮影:長岡洋幸)


 目黒学院ラグビー部の竹内圭介監督の第一声は「ほっとしています、正直なところ」だった。

「いろんな人が支えてくれて、整った舞台だった。感謝です」

 社会情勢の変化で各種スポーツ大会が中止となったなか、全国高校ラグビー大会の東京都第1地区代表予選の決勝を無事におこなえた。11月8日、東京・秩父宮ラグビー場。本郷に47-5で勝ち、3年ぶり19度目の全国行きを決めた。

 去り際には多くの保護者、知人から祝辞を投げかけられる。朗らかに応じる。

 今季は各所でチームの充実ぶりが伝えられる。丁寧に言葉を選ぶ。

「そういうふうに言ってもらっているんで、なんとか頑張りたい」

 前身の目黒高校で1994年度の主将だった。学年間のコミュニケーションが困難とされた当時の体育会系クラブにあっても、下級生に積極的に意見を求めた。10代にして周囲に慕われた。

 コーチから監督に昇格した2017年度、4年ぶり18度目の全国大会出場を決める。しばらく競技の現場を離れていた90年代のOBの1人も、指揮官の人柄を思い返して応援を再開させたという。竹内監督本人はこうだ。

「極限の理想を言えば、皆が幸せになる部にしたいです」

 2020年度の目黒学院では、活動を再開させる7月までの間に「前向きな状態で身体も大きくなってきた」と指揮官。トンガからやってきた部員には「寂しいと思います。高校3年間、(実家に)帰らないので」と想像力を働かせながら、こうも続ける。

「彼らは何をしに(日本へ)来たかというのを忘れずにやっている。それが、日本人にいい刺激になっていると思います」

 親元を離れて将来を切り開くと覚悟した仲間の存在が、この国で生まれ育った部活青年の視野を広げているのだと見る。

 決勝戦で登録された海外出身選手のうち、注目されたのが2年生のシオネ・ポルテレだ。

 日本の高校ラグビー界に挑んできた海外出身者は、セットプレーに入るFWではLO、FL、NO8、球を回すBKではCTB、WTBなど、突破力や身長の求められるポジションを任されやすい。

 ところが母国ではBKだったというポルテレは、来日後に最前列の右PRへ転向。竹内監督が「将来的なことを考えて」と、提案したのだ。スクラムを最前列で組む働き場にあって、「身体が強い。姿勢をしっかり覚えたら右PRとしての適応力があった」とのことである。

 身長185センチ、体重106キロのサイズで臀部が大きく、胴回りは引き締まっているポルテレ。ラインアウト時は逆側のタッチライン際に立って、持ち前のスピードを活かす。前半1分にはその形でトライを奪った。

「世界最速のPRを目指しているんです。足が速いので外でスピード勝負もでき、フィジカル勝負もできる」

 教え子をこう褒める竹内監督は、ポルテレの課題を問われて冗談交じりに返す。根底では個性を重んじる。

「イージーなミスが多いです。ノックオン(落球)したり、タッチの外に出たり。タッチライン際にいたら(フィールドの)内側に入っていくのがラグビー選手の常識なのですが、彼は抜けると思って(大外を)走っちゃう。それは、抜けますよね。タッチラインの外なんだから。ある種、スケールがでかきすぎて、我々の理解ができないところがある。…そのあたりを、ちゃんと教えたいと思います」

 ポルテレの同学年ではWTBの林星安も際立つ。フットワークで人垣をすり抜けたり、相手のいない箇所へピンポイントでキックを蹴ったり。人数的に2対2と数的優位のないエリアで球をもらう際に、正面の相手の視野からやや外れることで2人の防御をひきつけたり。

 3年生でもLOのソロモネ・フナキ、NO8の佐野祐太が突進力を誇る。SHの飯島乾太主将とともに突き進む指揮官は、「ここ(予選決勝)までが精いっぱいだった。これから、花園に向けて考えたいです」と再出発を誓う。

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